不動産業界を外から見た

売却一括査定のライバルになり得るか?エージェントマッチングサービス「TAQSIE」開始

のらえもんは、toC向け不動産テックはそれなりに研究してきました。特に「おうちダイレクト」については何度も分析記事を投稿し、今後の趨勢もほぼ予測してました。

(書いた文章は本人全部忘れてたんですが、いま読み直してもいい分析ですねこれは)

昨日付の日経新聞に、久しぶりに「おっ」と思えるサービスが出てきたなと思うので、こちらのブログでご紹介します。

三菱地所、不動産仲介で担当者選択可能 大手10社と連携

三菱地所は不動産の仲介担当者を選べるサービスを始める。中古の戸建てやマンションを対象に専用サイトを5月中に開設する。東京建物系など約10社の担当者100人が登録し、物件の売却検討者は担当者の経歴や実績などで選択できる。日本の不動産市場は海外と比べ情報の透明性に課題があり、新サービスで中古住宅売買市場の活性化につなげる。
新サービスは三菱地所子会社の三菱地所リアルエステートサービスが運営する。同社は企業間取引(BtoB)の不動産仲介を手掛けている。個人が保有する不動産をより円滑に売却できるようにするため、新サービスでは中立的な立場を取るため運営に特化する。

(中略)

参加企業に対する課金モデルを成約ベースにした点も新サービスの特徴だ。一般的な一括査定サイトの場合、登録する不動産会社は売却検討者から問い合わせがあるごとに手数料を支払う。
不動産会社の仲介担当者はこうした課金モデルも背景に、収益を上げるため売却検討者に積極的に電話やメールを送るケースが聞かれる。検討者が対応に不満を抱き、中古物件の売買が進まない一因との指摘もある。
新サービスでは参加する不動産会社は成約価格の0.7%を三菱地所系に支払う。同社は5月下旬のサービスの本格開始に先立ち、21年秋に東京23区内で実証実験を行った。

この「TAQSIE」サービスの特徴としては

  • マンションや土地を売却したい人が専用サイトに会員登録する
  • マッチング度合いの高い仲介担当者が複数表示される
  • サービス開始時から約10社と提携
  • 利用者料金はもちろん無料。仲介店側も成約課金モデルのため、仲介手数料が入ってくるまで利用料はかからない
  • 三菱地所リアルエステートサービスが運営し、彼らはプレイヤーとして参加しない

というところでしょうか。のらえもんは一括査定サイトというそのもののあり方に対して極めて冷淡な見方をしているので、「評判がよく、エリアをよく知っている仲介マンを紹介してくれるサービス」の出現は正常化の第一歩として歓迎します!

たとえばスムログでは、売却一括査定サイトについて「この図で得をするのは唯一、一括査定サイト業者だけ」と書いてます。他はみんな損するからね。

こちらのトップページを見ると、

画像出典:タクシエトップページより

特にこの後半の下りが面白いですね。
“タクシエは、査定サイトの金額にまどわされることなく
あなたの家の売却に最適なパートナーに
ダイレクトに相談できる無料のマッチングサービスです。”
に笑いました。ぶっちゃけ過ぎてますね。そうおっしゃいますけど一方で、グループ会社の三菱地所ハウスネットさんは、すまいValueに参加されているじゃないですか…(笑)

さて、このエージェントマッチングサービスに対するのらえもんの評価ですが、不動産仲介業界をポジティブに変える方向だなと思う反面、利用側である消費者にとって積極的に選ぶ理由があまりないサービスだなとも考えました。

■不動産仲介業界をポジティブに

不動産売却一括査定サイト、最大の弱点は「各社が出してくる査定結果が買取ではない」という点に尽きるでしょう。中古車一括査定は、その場で業者が買ってくれるため、消費者にとっては「多くの中古車仕入れ業者を呼んで一斉に札を入れさせる」というのは理にかなっています。

しかし、不動産仲介業者はあくまでも「仲介」。各社は専任媒介契約を取ろうと必死に高い査定結果を出してきますが、この価格で売れることは仲介側は保証してくれないのです。

そして「相場より高く売れる保証・テクニック」などほぼ存在しません。不動産仲介業者の仕事は書類関係を除けばかなり属人的であり、特に大手であれば会社の差はほぼないため、もし高く売れるテクニックがあればあっという間に広まります。

一括査定結果には、この「属人的」な要素が省かれており、結果的に不幸を招くことも多いと判断します。近年の不動産仲介側の疲労の一つは、一括査定サイトが原因だと考えます。

しかし、会社を飛び越えて「個人」に評価が紐づく時代になるといかがでしょうか。このタクシエさんのプラットフォーム上では、見た目や経験、趣味という個人のデータだけでなく、このサービスを使って取引をされた方の感想が個人に紐づけられて掲載されると聞きました。Uberのように☆がついていくわけですね。

画像出典:某エリアで登録してマッチした人一覧

こうなると、仲介マンのセカンドキャリア形成という意味も出てきます。「○○不動産の〇〇」ではなく個人名に蓄積された評判を元に活動できるからです。

もちろん、ブログ・インスタ・Twitter・YouTubeなどでの発信を通して仲介マンとしての信頼を積み重ねる方もいらっしゃいます。こうした個人ベースの発信と仲介マンとしての実績と紐付ける可能性を秘めたサイトと考えられます(これは拡張性の話をしているのであって、現状の話ではないです)。

■といっても、初回売却の段階から取引には仲介マンが大事と一般人が気付けるのか

視点を変えて消費者側から見ると、一括査定サイトのバリューは「いますぐ査定結果が出る」「探さなくても不動産屋から提案してくれる」です。対して、こちらのサイトは「相性の良さそうな仲介マンを紹介します」というものです。

どちらのほうがよりバリューを感じるでしょうか?そうです、前者ですね。このバリューを覆せるだけの魅力がタクシエさんのサービスには現状見当たらないな、と素直に思いました。

「情報透明化が進んだ米国ではエージェントを選ぶようになっている!」

確かにそうなんです。その代わり、不動産取引情報は高度に透明化されて、自宅は教育環境から治安までポイント評価されているし、勝手に仮査定結果が出ている中で「ではあなたは誰を使って不動産売却しますか?」という状態になっています。日本は商慣習の違いからここまでの透明化は現状できていません。

不動産仲介業者が使う「レインズ」は極端に情報公開に非協力的で、わざとデータを使いにくくする改修まで行いました。まだ、米国並みの情報公開+エージェント制までは遠いのかもしれません。

■では、なぜ「おっ」と思ったのか

このようなサービスは、業界内からは出にくいものでした。特に大手三社つまりリハウス・リバブル・住友不動産販売からは絶対でない発想で、同様のサービスを出したとしても自社のみで完結させようとするでしょう。

今回、プレイヤーとしては出ずに運営者に徹すると宣言しているのは三菱地所リアルエステートサービス。つまりtoBの会社であって、toCの会社ではないので、運営として大手三社以外からの参加社集めがベンチャー企業よりも容易だったことがわかります。

タクシエの初期参加10社。準大手の会社を集めてます。現状、最大手の3社がいないのは当然と言えば当然。

ここで、toC向けの不動産テックを行うとしたらという仮の話をしていますが、

「儲かってない不動産屋でなく儲かってる不動産屋」が運営に徹するサービスというのは、自己矛盾が起こりやすいのですが、そこが上手くクリアされているために、おっと思ったのでした。

エージェントマッチングサービスの船出の安全を祈願して、本稿を終えたいと思います。

 

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