不動産業界を外から見た

ヤフーとソニー不動産が仕掛けるマンション流通革命「おうちダイレクト」とは?

2015年11月5日、不動産業界に間違いなく激震が走ったと思います。ヤフーとソニー不動産両社(以下ヤフーソニーと記載)が仕掛けるマンション流通革命、その正体は「おうちダイレクト」という売却仲介手数料ゼロサイトの開設でした。

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本エントリの画像出典:おうちダイレクト公式Webページより

2015年初頭の新年特集で「ソニー不動産のビジネスモデルは早晩行き詰るので新業態が出るはず」、今年夏のメールマガジンでは、「レインズを介さない私設取引所の設立」と書いてきましたが、売却手数料ゼロまではあまり予想していませんでした、思い切った決断だと思います。

以下、今回発表されたマンション流通革命をマンション売却側の立場からまとめてみます。

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  1. 「売出しフォーム」に売却希望者が自ら入力する
  2. 自動的に査定価格が出力される
  3. 購入希望者とネット上でお互い匿名のまま物件の質問・回答ができる
  4. 初回の希望者見学の際にソニー不動産と媒介契約締結
  5. 「重要事項に関わる調査報告書」を自分で取得して入力
  6. 買主側の手数料は従来とおなじ「3%+6万円」がかかる
  7. 物件はyahoo不動産に無料掲載

つまり、個人間売買のプラットフォームではなくて売主も買主もソニー不動産と媒介契約を結ぶことから、普通の不動産両手仲介取引となんら変わらないということです。日本において個人間売買はいろいろハードルが高いので、媒介契約の範囲内でサポートしてくれるほうがありがたいでしょう。

ビジネスモデル的には買主はソニー不動産しか選べないことから、いわゆる「売主手数料ゼロ業者」とやっていることはなんら変わりません。また、ネット上で手続きが完結して広く(?)販売できる仕組みは、先行事例も存在します。

おうちダイレクトが新しいことは

  1. 売却希望者と購入希望者が匿名で直接やり取りできること
  2. ソニーの不動産価格推定エンジンが査定価格の根拠であること
  3. ヤフーソニーは物件調査をやらず、手間とコストは売主に丸投げ

の3つです。

1に関しては、明確なメリットがあります。いわゆる媒介契約を結んだ業者からの「囲い込み」による情報遮断に会いません。マーケットからダイレクトな問い合わせがあることを肌で感じることができます。

2ですが、正直微妙です。売主は不動産価格推定エンジンが出す価格から上を付けることはほぼありませんが、買主もこの価格を見られることから、システムが出した価格が基準でそこからどこまで値切れるかを考えるからです。ローン残債との兼ね合いになりますが、個別事情を一切考慮してもらえないので人によっては不幸になるかもしれません。

3は利用者にとって明確なデメリットですが・・・新しいです。
不動産取引をする際に、重要事項説明をするための調査書を作る必要があります。マンションの管理費・修繕積立金の月額、滞納者の有無、修繕工事履歴などです。これらの情報は、管理会社から取り寄せる必要があり、当然有料です。通常、売主側仲介業者が払うコストですが、これをシステム利用者が自ら取り寄せ入力することになっています。ちと利用者ハードル高すぎやしませんか。例えばコレなど。

管理費・修繕積立金、その他費用を確認する
・管理費・修繕積立金、その他費用は、管理会社に問い合わせて、必ず最新の金額を確認してください。
・管理費・修繕積立金がマンション分譲時の金額から変更になっている場合、変更後の金額を記載した証明書が必要になりますので、管理会社からお取り寄せください(発行に際して手数料が発生する場合がありますが、ご自身でご負担ください。)

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「物件情報入力は簡単です」と書かれてますが、最初の入力だけが簡単でその先にいくほど難しい

やはり真に自由なプラットフォームというのはなかなかできません。物件情報はどの不動産業者も見られるレインズに載らないでしょうから、ソニー不動産が過去散々批判してきた「囲い込み」と無縁ではなく、「ヤフーソニーによる新しい囲い込みシステム」といっても過言ではありません。また売主は当然おうちダイレクトのサービスしか使えず、一般媒介のように複数社平行して売却活動を行えるわけではないのです。

その証拠に、おうちダイレクトの説明では「他と媒介契約を結んでいる人は使えない」ことになっています。ソニー不動産とは一般媒介契約を結ぶにも関わらず、です。

・以下のいずれかの場合、売り出しは行えません。
– 宅地建物取引業者の所有
おうちダイレクト以外のサービスで売却活動を行っている
– 実際に売却する意思がない
– 購入希望者による物件の見学を受け入れられない

「マンション流通革命」というほど新しいかな?という印象ですが、選択肢が増えたのは良いことです。フルサービスを受けるには3%+6万円の手数料がかかり、売主が相応に汗をかくならその分無料というのは合理的だからです。

ソニーヤフーも売主側でこれを使える人は、人口の2%くらいと考えているのでしょう。ですのでフルサービスのソニー不動産を残しているのです。問題は、買主側もここから買おうという人は推定2%くらいしかいないことなのですが・・・
(従来の不動産フリマサービスは推定参加プレイヤー0.01%くらいだったので格段の進化ではあります)

P.S.
そもそもこの話、「不動産仲介店から手数料を取って物件情報を掲載するビジネス」をするヤフーが率先して顧客を切るってのはありえないと思いますけどね。のらえもん登録してみたのですが、入力補助データがあるマンションでした。しかし、お金を取って仲介店が宣伝のために入れた物件情報を使って物件入力補助データに使うってモラル的には全く褒められません。

 

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