2016年2月24日付・日経MJ7面にて、ソニー不動産とヤフーが組んではじめた不動産ネット売買仲介サービス「おうちダイレクト」の惨状が伝わってきました。ソニー不動産と湾岸タワーマンション検討者&居住者は、本来相性がいいはずでして、のらえもんブログではサービス開始前から彼らの動向に注目してきました。
【24日付 MJから】ネット不動産,成約ゼロ。個人がインターネットを使ってマンションの売買をすることができるサイト「おうちダイレクト」を手がけるヤフーとソニー不動産は知名度の向上を急ぎます。7面です。
— 日経MJ (@nikkeimj) 2016, 2月 23
ヤフー不動産、まだ成約ゼロなんですね。ずっとゼロじゃないかという気も。 pic.twitter.com/CoauFFvXwF
— たにやん (@t_taniyan) 2016, 2月 23
記事をまとめると
- サービス開始3ヶ月で成約数”ゼロ”
- 売却希望者は20〜40代
- 現状24件の登録(2/24現在)
- 手続きがネットで完結するとの”誤解”がむしろ利用の低調を招く
- 購入側インセンティブとしてインスペクションサービスなどの実施を検討中
ということでした。「これは不動産流通革命だ!」とサービス開始時点ではマスコミ巻き込んで鼻息荒かったのに、結果的にいまのところ成約数ゼロは、おうちダイレクト中の人も冷や汗かいているでしょうね。実際にサイトを訪問してもかなり敗北感漂う状態になっています。
どうしてこうなったのでしょうか?湾岸の妖精のらえもんはこう考えるのです。
1:このサイトから購入する人はどんな人か、そのような人が実際にいるかどうか、本当に考えたのか?
まず挙げたいのが、サービス設計者はおうちダイレクトから実際に購入しようとする人を具体的なイメージとして本当に考えたことがあるのでしょうか?まず本気の購入者なら、検討している駅前の不動産屋に相談しますし、相談前段階なら検索します。このサイトのターゲットゾーンである東京23区・4000後半~6000万円くらいの購入検討者なら、ネット検索は慣れています。SUUMOやHOME’Sなど他の不動産ポータルサイトを毎日比較して、自分にあった物件はないかと探します。そう、ファジーな条件から比較したいのです。
このおうちダイレクト経由で買っても特に安いのでなければ、選択肢が豊富な方を消費者は選びます。時には1億円以上の物件も登録されていますが、ネット経由で1億以上の住宅購入を決断する人などいるのでしょうか?
いや、わかるんですけどね・・1億円以上の物件を購入しに来る人はまずリアル○ランにいくでしょうよ
2:「めんどくさい」という壁の存在を意識したのか?
不動産の売却には常に「めんどくさい」が付きまといます。そして安全な取引にはコストと時間がかかるものです。
おうちダイレクトは物件調査を売主側に求めています。仲介手数料ゼロに惹かれる方は一定数いますが、「めんどくさい」壁を越えることができる人はそこまでいないのです。手数料ゼロといってもここにしか掲載されないのなら、仲介手数料ゼロ業者に頼んだほうが囲い込まれるとはいえSUUMO等ポータルサイトに掲載しますし、結果的により多くの人の目に触れます。
3:業界全体のモラルを批判しながら、自分たちだけが利用できるクローズドネットを提供しても賛同の声が集まらない
不動産流通革命とは結局何のことだったのでしょう。
・自分で値段を決められることでしょうか?
→ええ、それは従来の仲介店でも査定額に関わらず決められます。
・精度の高い機械学習による査定額でしょうか?
→でも残債や住み替えまでの期間など、売主側のさまざまな変数が存在します。
・買主と直接コンタクトがとれることでしょうか?
→たとえ買主とコンタクトが取れても自己発見取引(仲介業者をかまさないので手数料が発生しない取引)はシステム上できません。
そもそも、このシステムは他の不動産仲介店に公開されていません。よって「新たな囲い込み」であるとの批判は常に起き、賛同の声が集まりません。
「不動産業界の悪弊を廃し、ネットを介する不動産取引の正解の形」は、クローズドな新設取引所ではないということが明らかになったということが、今回の教訓として残るのではないでしょうか。ソニーとヤフーのタッグでもできないのですから。
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