タワーマンションに憧れはあるけど、その後の維持費用が高いんじゃないかと二の足を踏む人は多いですね。実際、今後の修繕に関してはまだ決定的なデータがきちんと公開されていないこともあり、ことさらに不安を煽る記事や書籍もあります。
そこで、今回はタワマンの修繕と今後についてきちんと考えてみましょう。今回の「タワーマンション」の定義としては、60m以上の超高層認定建築物であり、かつ形状が棟状のものを指すことにします。一般的なタワマンのイメージと同じだと考えてください。
大規模修繕は何のために行われるのか
もうこれは簡単で、マンションが住まいとしての機能を維持していくためには、きちんとした修繕が必要だからです。マンションのような集合住宅ですと、細々とやっていくのは経済的に不合理ですし、また個別の事情を勘案していられないので、スケジュールを決めて行うことになります。
マンションの適切な維持は、「防水」と「動くもの」との戦いです。
すなわち防水とは、
- 屋上防水
- 外壁防水と塗装
- 外廊下や階段、ベランダ
- 雨風が吹き付ける場所の金具交換
動くものとは、
- エレベーターや自動ドア、機械式駐車場
- 電気、給水、ガス、排水、排気など
- サッシや扉の交換
防水のために、下地を補修したりシーリングを埋めたり、塗装をやり直したり、屋上防水を施工したりしますし、エレベーターなどは部品交換ができなくなる前に新しく入れ替える必要が出てきます。
タワマンの大規模修繕は何年目に行われるのか
国土交通省の長期修繕ガイドライン上では12年、最近では15年と言われていますが、これは実際の劣化をモニタリングしつつ、となります。施工状態が良ければ、修繕周期を伸ばしても良いでしょうし、状態が悪かったり海風が吹き付けて厳しい環境だったりすると、修繕周期は伸ばせないでしょう。
ですので、一概に「この周期が正解!」ということはできません。タワーマンションの事例でも、19年目・20年目ではじめて大規模修繕工事に至ったところもありますし、逆に12年目で大規模修繕に入ったところもあります。震災で被ったダメージを考えると、あまり伸ばせないという事例も聞いたことがありますね。
タワマン大規模修繕の費用目安と実例
板状や低層マンション含めて戸あたり100万円が相場(マンション大規模修繕工事に関する実態調査・国土交通省より)ということですが、タワマンの場合は千差万別なので一概にこれも言えないということです。普通はこの100万円よりも高くなります。
当然ですが、周期を後ろ伸ばしにすると、戸あたりの予算が高くみえても結果的に安い場合もありますね。我らがはるぶーさんによると、大規模タワーマンションの修繕事例でこんな予算のようです。
エルザタワー55 12億円(1戸185万円)
センチュリーパークタワー 17.5億円(1戸230万円)
ザ・ガーデンタワーズ 8億円 (1戸170万円)
湾岸タワーの管理費と積立金の築年別傾向より
おおずいぶん高く見えますね、しかし、有明オリゾンマーレの格安修繕で契約成功の事例も出てきました。
2004年に建てられた、総戸数396戸の有明地区では最も早く建てられたタワマンの一つだ。有明地区では最初となる、オリゾンマーレの第1回大規模修繕工事がこの6月からスタートする。
驚くべきはその“コスパ”だ。計画通りの施工範囲に対して、1世帯平均75万円程度で大規模修繕工事を発注できているのだ。
タワマンを廃虚にしない!高コスパ修繕から資金潤沢経営まで、スゴ腕管理組合に学ぶ
誤解してほしくないのは、特にオリゾンマーレが優れていて、他が駄目ということではありません。いや、オリゾンの事例は素晴らしいとは思います、なんといっても2004年竣工でこれから大規模修繕なので17年目まで引き延ばしての修繕となります。
一方でセンチュリーパークタワーの場合は、全内廊下のカーペットまですべて交換というかなり気合の入ったものです。エルザタワーの場合は、建物の形状がやや特殊なため、戸あたり換算ではかなりかかっているように見えますが、平均専有面積がかなり広いマンションです。
そもそも、超⾼層建築であるタワマンの⼤規模修繕費は基本的に割⾼である。タワマンの⼤規模修繕コンサルティングを⼿掛ける、⼟屋輝之・さくら事務所マンション管理コンサルタントは「タワマンの60年分の⻑期修繕費は、⼀般の中⾼層マンションよりも30〜40%ほど⾼くなる」と指摘する。
タワマンの資産価値が激動!?国交省が22年導入、新「管理・修繕認定制度」の衝撃
ということで、平均的なマンションの大規模修繕が1回あたり100万円/戸あたりとすると、「130万円~140万円」あたりが標準相場でしょうか。もちろん、オリゾンマーレのようにコストコントロールやきちんとした相見積で安くなるマンションもあるようです。
大規模修繕中は売りにくくなる?
タワマンの大規模修繕工事は2年の長期間になることもあります。特に、高層階は「ゴンドラ式」、低層階は「足場組み」となると、特に低層階は長期間、足場と網を見るだけの生活が長く続くことも。
タワマンは威信材的要素もありますから、見学者のテンションが売買成立にとって大事なところがあります。大規模修繕の最中は、部屋が暗くなり、ペンキの匂いやらするようになり、テンション上がるような見学となることは難しいでしょう。
実需の中古マンション見学者はほとんどの人が素人ですから、超人気のマンション以外だと多少なりとも「売りにくい」というのは間違いありません。
大規模修繕工事後には建物がきれいに仕上がりますので、そこでの売却ですと修繕中よりも売りやすくなるでしょう(しかし、それよりも部屋の中がキレイかどうかの要素の方が強いと思います)!ただし、大規模修繕工事で積立金がすっからかんになってしまうと、遠からず修繕積立が大幅値上げとなってしまいます。
大抵のマンションの場合、1回目の修繕工事→余裕でできる、2回目の修繕工事→きつい、3回目の修繕工事→特殊要因がない限り値上げしていないとほぼ無理のようです。
タワマン修繕積立金の今後
タワーマンションに限らず、新築マンションの修繕積立金は本来かかるお金に比べてかなり抑えられた水準で販売されています。
販売する側から言えば、価格(≒住宅ローン月支払い)+管理費+修繕積立金=月々の維持費と考えるため、修繕積立金はなるべく安く抑えたいと思うからです。新築時の修繕積立金水準がそのまま維持され続けるのは考えにくく、大幅なアップは避けられません。これは板状や低層マンションも同じです。むしろ戸数の少ない低層マンションなどは、並のタワマンよりも戸あたりの負担が高いところもあります。
では、だいたいどれくらいの水準になって行くのか。”管理のドン”はるぶー氏によると、長期的、平米あたり300~350円が必要ではないかということです。つまり、70平米であれば、修繕積立金”のみ”で2.1万円~2.45万円ということですね。国交省ガイドラインは20階以上のマンションは平米206円でしたから、約1.5倍ということです(追記:はるぶーさんによると、そもそも国交省のガイドラインはデータが古いとのことでした)。
【20210929追記】国交省のガイドラインが変更されました。
このガイドラインによると、20階以上の修繕積立金の平均額は「平米あたり338円」が目安とのことでした。はるぶーさんの言った通りに増額になりました。なおこの平均額は「機械式駐車場を除く」という文字が入ってます。
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① 国交省ガイドラインの時は消費税率5%⇒今10%
② 機械式駐車場の修繕費用は別建て(無視されがち)
③ ここ10年の修繕工事費用の高騰は当然反映がない
などで、”ガイドライン”の超高層200円/平米/月ではタワマンでは不足かなと。
⇒— はるぶーちゃん????は㍇ヲタクで善意の理事なの (@haruboo0) June 18, 2021
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湾岸の事例でも長期均等割りに移行したタワーは軒並み>300円/㎡/月。
タワマンの修繕計画を無数に見てきたさくらの土屋さんもダイヤモンドで板マン+3-4割と言及している。
駐車場をど派手に外部貸しして荒稼ぎしてるとかでなければ300円/㎡/月は要るよなと。— はるぶーちゃん????は㍇ヲタクで善意の理事なの (@haruboo0) June 18, 2021
早めに修繕積立金を値上げしたマンションはこの水準を下回るところで済むかもしれないし、遅くなるとこれを超える水準まで値上げしないといけない。
選ぶ側の意識も「あ、修繕積立金が高いからこのマンションは良くない」と思うのではなくて、むしろきちんと管理されていて良いマンションである、そう思うように意識改革しないといけませんね。
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