読者から長文のお悩みメールをいただきましたので、内容を抜粋して、このブログを読まれる方にも関係がありそうなエッセンスを取り上げます。
お名前: ゆったりまったり
カテゴリ: 中古マンションの売却に関すること
相談内容: はじめまして。こんにちは。
のらえもんさんのご意見をお尋ねしたくお問い合わせさせていただくことにいたしました。
売却を考えておりましてマンションについて様々なことを調べていたところマンション管理適正評価制度という制度があることを知りました。こちらの制度が急速に普及したり、今後売却の価格に影響が出てくることということがございますでしょうか?
いくら地価が上がったとしてもこちらの制度の影響が色濃く出てしまうことが予想されるということであれば売却時期を早めなければならないだろうなと考えております。
現住居での管理体制などには不安や不信感を覚えてしまうことが多々あるものでとても気がかりです。
(中略)
初めての購入でこんな目に合うとは想像もしていませんでした。管理は住まいにとって重要な柱のように感じました。各都道府県で差はあるかと思いますが、管理のプロはどの不動産会社さんに多いのかなととても不思議に思ってもおります。
今回お尋ねいたしました制度は現住居のようなことであると査定に影響が出てきたり売れにくくなったりするという制度なのでしょうか?評価基準等についてはホームぺージで確認したのですが私ではよくわかりませんでした。ごめんなさい。今後どのような影響が考えられるのかなどのらえもんさんのお考えを予測や推測を含めて教えていただけましたらと思っております。
お忙しいところ誠に申し訳ございません。
まず、いくつか誤解があると思うのでその話から。
管理のプロはどの不動産会社さんに多い?
不動産世界は曼荼羅のように広く、分譲マンションの売主となるデベロッパー・不動産ファンド・ビル賃貸業・法人向け仲介・個人向け仲介・ブローカー・マンション管理会社・不動産管理会社など多岐にわたります。
このうち、ペンネーム「ゆったりまったり」さんのいう「管理のプロ」というのはマンション管理会社のことで、売主であるデベロッパーのことではありません!また「このデベロッパーが作ったマンションなんだから、管理面でも絶対に安心」ということはありません。
マンションというのは、区分所有者の自治に任された建物であり、運営を担う管理組合理事にヤバいのがいたらマンション管理会社はたとえプロだとしても対抗できないのです。むしろマンション管理会社は他にもあるので、リプレースされる可能性もあります。たとえ財閥系デベが作ったタワマンだとしても、その年の管理組合理事会の意向次第では首が飛びます。
ということで、マンション管理というものは「そのマンションの民度」にしかならない、というのが結論となります。繰り返しますが、デベロッパーは管理のプロではないし、マンション管理会社が◯◯だから安心安全!ということもありません。
マンション管理適正評価制度の影響は?
現状は殆どありません。というのも、こういった外部評価制度に必要な網羅性の要件を満たさないからです。2024年6月時点で、登録数は4,768件と、一件多いようにも見えますが、マンション管理業協会が受託しているマンション管理組合数は、102,569組合となりますから、評価制度で採点されたマンションは市場の5%にもなりません(その他自主管理マンション等もあるので割合としてはもっと少ない)。
そもそもマンション管理適性評価制度というのは、組合側が「採点してください!」と自分で求めて総会議決までするものであり、中古車の検査機関AISが発行する車両品質評価書のように業界標準で流通している車はだいたい付いているようなものではありません(中古車業界にはJAAAというのもあり統一基準はないようですが…)
マンション管理適性評価制度は、格付け機関の仕組みを参考にしたと思われます。債権を発行する会社は、債権を投資家に買ってもらいたいのだけどそのままでは信用を得られないため、自らお金を払って格付機関に審査してもらい、その結果出してもらった格付けで金利が決まります。
しかし、マンション管理組合の場合「別にマンション管理を第三者から評価してもらわなくても何も困らない」のが実情なのです。そして、評価基準は公開されているので、☆2〜☆ゼロ評価をもらいそうというのは事前にわかります。お金払って低い評価をもらって公開されてしまうのであれば、機能不全管理組合は最初から評価してもらわないほうにインセンティブが働きます。
また、☆5や☆4評価をもらっても網羅性がないので、最大手の不動産ポータルサイトには売り物件と紐づいた状態での掲載はされません!これが面白いところで、不動産ポータルサイト界で唯一、atHomeがマンション管理適性評価制度情報の掲載をすると発表しましたが、それは「建物ライブラリー」での運用ということで、実際の売り物件と紐づいているわけではありません!
つまり、ポータルサイトでは管理の☆状態があるかないかすら確認できないので、一般消費者としてはアクセスが誠にしにくい場所にある…というのが現状です。
長々と述べましたが「ゆったりまったり」さんが心配するような「ウチのマンションは民度が低いから…マンション管理適性評価制度でボロクソな点数を付けられて売値が下がってしまうか心配!」というのは杞憂、ということになります。
そして、マンションは区分所有者の自治に任されていることから、国や機関が強制的に調べ上げて勝手に公開する、というのも難しいですね。もう一つのやり方として、帝国データバンクのように調査そのものは無料にしておいて、賃貸や売買時においてその情報を仲介に売るというやり方もあるとは思いますが、仲介が買うほどの情報でもない気がします。だから格付機関モデルなのでしょうけど。
表題の「すぐれたマンション管理は資産価値が上がり、よくないマンション管理では資産価値が下がるのか?」という設問に対しては、築10年くらいまではなんの影響もないし、自分が理事になり変えてやるという気概も時間もないのであれば、自分に合わないマンションだとか管理が不安と思ったならとっとと売却して別のところに住んだほうがよい!という結論となります。
築20年、30年となるとさすがに管理状態が誰の目から見ても可視化されていきますから、そのときは見学したときの客の反応が変わってくるとは思います。そして美魔女は若い頃から努力していたのと同じく、スタート地点からほどないところでどれだけ努力したかが後々出てくるものかと思うわけです。自分のマンション管理について、日々汗をかいている方は尊敬します。
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