東京五輪の中止が囁かれていますね…私は諦めてほしくはないのですが。
5~6年前くらいからでしょうか。「のらえもんさん、東京五輪が終わったら、不動産価格は暴落しますよね」とか「オリンピックイヤーが来るまで我慢して、その後マンションを買おうと思います」というお声をよく聞きました。5年前なら2015年ですか。もしあの時にのらえもんブログを読んでいて、2021年の今まで湾岸タワマン買わずに我慢している人たちがいたとしたら、果たして今の状況を見て何を思うんですかね。「頭の良い人ほど、マンション暴落を信じて待っている」と経済誌記者から聞いたことがあります。だから、雑誌もたびたび不動産暴落論を特集するんでしょうけど。
なお私の実母からも「五輪が来る前にあなたのマンション売っちゃいなよ」というありがたいアドバイスを何度か頂戴しています(じゃあ売ってどこに住むんだ…)。ですから、テレビが情報入手ルートな一般人の多くの方は、同じようなことを思っているんでしょう。
さて、オリンピックイヤー(2020)暴落の予言が成就しなかったと思ったら、今度は「五輪中止暴落論」がメディアに乗るようになりました。いい加減にしろ。
東京五輪中止なら「湾岸タワマン」の価格相場は本当に下がるのか
NEWSポストセブン
2021.01.20仮に五輪が開催されないとなると、そのような祝祭ムードは一気に吹き飛んでしまう。五輪開催決定後に、約1.5倍となったマンション価格の相場観は短期間のうちに元の「1.0」に戻ったとしても不思議ではない。そうなったとしても、それはただの自然現象である。しかし、傍目には「暴落」と見えるかもしれない。
むしろ今後深刻化するコロナ不況の影響で「1.0」を切ることさえ十分にあり得る。なんといっても、この7年間に日本経済は大して成長していないばかりか、個人所得は実質的に減少しているのだ。一部エリアのマンション価格が高騰したこと自体が不自然だったのである。
はいはい、書き手はまたいつもの評論家の方ですね。
彼が過去、どのような予言をしてきたか、長嶋修先生が予言の軌跡についてこうまとめられています。
●武蔵小杉
07年:200万
09年:リーマン暴落→坪220
11年:地震リスク暴落→坪240
14年:消費税増税暴落→坪260
18年:消費税再増税暴落→坪280
19年:大水害暴落→坪300
20年上半期:コロナ暴落→坪320
●都心湾岸
16年:150まで暴落→坪400
不明:ららぽ閉店→今日も混雑https://t.co/uuXWolyXm1— 長嶋 修 不動産コンサルタント さくら事務所会長 (@nagashimaosamu) November 17, 2020
ここ10年程、専門家としてメディアで話される内容がいつも反対の方向に行くのですが、PVがとにかく欲しいメディアからは「ワタマンの暴落を書いてくれる人といえば!」と重宝されてますね。
相手にするのもめんどくさいのですが、こういうのうっかり信じちゃって不幸な方を一人でも減らすために、Google検索に引っかかるようタイトルを少々工夫させていただきました。
都内のマンション価格は需要と供給の均衡曲線で決まるのではない
中学校の授業で習う需要と供給の均衡曲線は、見事な説明のために皆さん覚えていると思います。五輪後暴落論は、「オリンピックで浮かれているからみんなマンションを買う(=需要が増えている)。でも、それが過ぎれば、もしくは五輪が中止になればマンションを買わなくなる(=需要が減少する)。だから、価格は下落するはずである」こういう説明ですね。需要曲線が左にシフトするから均衡点が左下に下がる、すなわち均衡価格は下がることになります。
でも、この理論、現在の都内のマンション価格には当てはまらないんですよ。たしかに、リーマンショック時にはこの通りとなり、投げ売りやアウトレットマンションなどという言葉まで出ました。この時は新築マンションの売り手が数多くいた上に資金需要が厳しく、会社が飛ぶ前に在庫を一刻も早く現金化する必要がありました。
今は大手の寡占化が進んでしまったため、需要が減少したら、供給も細ってしまいます。価格を下げてまで売るのではなく、供給を細くして時間をかけて売る。それができる体力があるところしか残っていません。
五輪が来るから湾岸タワマンを買って住む、という人は実のところいない
周りの人に聞いても、五輪があるからその会場近くで住むために購入した、という人に遭遇したことありません。五輪開催決定は、東京湾岸エリアの開発を一気に加速させました。その開発を期待して購入した人ばかりです。
実際に、ここ数年のオープンで思いつくだけでも
- 環状二号線の開通(全線開通は2022年度)
- 東京BRTの運行開始(本格稼働は晴海フラッグ入居後)
- 豊洲ぐるり公園の完成
- 豊洲ベイサイドクロス完成とららぽーと3の拡張
- 晴海臨海公園と緑道公園~晴海フラッグまでの一体開発
- 勝どき駅の大幅拡張
- 有明アリーナと体操競技場の完成
- 有明ガーデンの稼働開始
- 東京国際クルーズターミナルの稼働開始
と急ピッチで開発が行われました。多くは住環境として魅力が増すものです。そして五輪後には、有明エリアは更に更に完成度が上がりますし、豊洲には千客万来施設が稼働します。お台場もパレットタウン再開発が始まります。それに、2000年代初頭から始まった丸の内~八重洲~日本橋の再開発ラッシュはまだまだおわりません。オフィスの重心は東京駅側に大きく映りました。そしてこれからも東京駅の目の前は開発が続きます。常盤橋に日本一の高さ「トーチタワー」や、八重洲口の巨大ビル再開発などオフィス床の供給は続く予定です。
「東京の街の成長は30年前の1990年で終わっている」「東京に発展するフロンティアは存在しない」と先の記事には書いてますが、そんな馬鹿な。湾岸はこの30年間東京のフロンティアであり続けましたし、街としての魅力は格段に上がりました。1990年の湾岸と2020年の湾岸は、もうまったく別物といっていいほど違うのです。
都市観が現実とここまでかけ離れた人が語る東京論を、多くの方が信じてしまい、意思決定が歪められているのは不幸の源でしかありません。
一昔前と違い、2021年はフルタイム正社員夫婦が2馬力で購入している
勤労者の給与が変わっていないのに、マンションだけ上がっても、買える人がいなくなる…そんな風に考えていた時期が俺にもありました。
2021年の今、私が住宅購入相談に乗る一次取得者はすべて共働き世帯、そして購入後も正社員を辞める気がない、キャリア志向の奥さまが多いのです。これは私も驚きました。
いまの夫婦は一生共働きが当たり前になっています。フルタイム正社員2人でペアローンを当たり前に組むので、世帯としての購買力はむしろ高まっているのです。
・・・え?離婚したら大変だろうって?
そりゃそうなんですけど、だからこそ流動性が高い湾岸タワーマンションを買おうとするんじゃないでしょうか。
マンションの価格下落が起こるのは、低金利政策が終了したら
最後に身もふたもないことを言いますが、マンション価格の高騰を支えている大きなロジックのひとつは日銀の低金利政策です。
私の親の時代は住宅ローンは4%、5%あたりまえの時代でしたから、「7000万円なんてとんでもない!フルローン?もっとあり得ない!」と拒否反応が親世代に起こるのは当然なのですが、今や変動0.380%で借りれる時代なんですよね…だから、頭金1割必ず入れるというのも正義ではなくなっています。頭金相当分は手持ちで持っておきながら、低金利をとペアローンの住宅ローン減税の旨味をフルに活かすために、フルローンでの購入の方が最適な戦略となってきています。
実は、4000万円35年4%と7000万円35年0.380%は、月々の返済額17.8万円で一緒なんですよね。お父さんたちの感覚と全く違うのです。
逆説的に言えば、日銀が低金利政策を止めたら、不動産価格は下がります。購買力が劇的に下がりますから。しかし、超高齢化社会を迎えている今、金利機能が復活する時ありますかね…日本円がドルに対してとても下がった時くらいしか考え付かないのですが、いかがでしょうか。
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自分と家族の幸せのために家を買う。それは板状マンションでもタワマンでも戸建てでも同じこと
「暴落するのは間違いないから、その時までは買うのを待つ」という賢い方々。
あなた方に聞きたいのですが、家って相場どうこうで買うものですか?家というものは、資産性もさることながら基本は自分と家族が、今以上に幸せになるために買うものです。2015年から今まで待って、更に数年待って…その時あなたはおいくつですか?奥さまは?お子さまは?
十分な貯金が貯まるまで、家を購入するのはやめて、2DKの公団住宅で我慢。娘と息子がどちらも社会人になった時に、やっと念願の注文住宅を建てたものの、子どもはすぐに結婚してしまい、2階の子供用部屋は年に1,2回しか使わないという夫婦を知っています。もし、ちょっと背伸びして子ども達が幼稚園の時に買ったとしたら、その家でどれだけ思い出を刻めたことでしょうね。時間は戻ってこないのです…
ということで、のらえもんには珍しい釣りタイトル気味のエントリでした。それではでは。
昔のノラさんが帰ってきましたね。今回のコラムは、ノラさん戻ってきた的な感覚があって非常に懐かしい。お帰りなさい。
オリンピックは観客を大幅に制限して開催されると思うよ。 今落としどころを
探っていると思う。 でも水を差すようだが、夫婦ペアローンてだいじょうぶなのかな
細君がまだ30代のうちはよいが、50代になっても男性社員と同じくらいの収入が確保
できるのかな。 日本の企業体質が激変するとは思えない。 例えば真夏にスーツとネクタイを
着用して営業スタイルが相変わらず存在している。 まさに不動産業界がその例である。
かつての ゆとり返済 の二の舞にならなければよいが。