ユウタロスさんのとあるツイートがきっかけで、タワーマンション修繕に関する議論がネットで巻き起こっています。
郵便受けに臨時総会の資料が。ついに来たよ大規模修繕。 恐らく日本初の50階以上建ての超高層タワーマンションの大規模修繕が始まる。 ウチが詰むなら、今売ってる湾岸中のタワマン皆15年後に詰むから責任重大。 それにしても、見積依頼したスーパーゼネコン5社が全社辞退ってマジかよ。
— ユウタロス Ver.1.2.1 (@bishop_ring) 2015, 3月 20
本件に対するまとめや、そのコメントなどネットの反応はこちら
54階建としては日本初、大規模修繕に挑む超高層マンションの総工費は約20億円
-市況かぶ全力2階建
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54階建てのタワーマンション 大規模修繕を計画するも見積依頼したスーパーゼネコン5社に辞退される
(ガバログ)
上記をざっと眺めると、一部鋭いコメントはありますが全体としては「なんだか煽りコメントにそのまま単細胞マジレスじゃない?わかってないなぁ」という印象です。
この議論を見てると、とある聖書のエピソードを思い出します。
全地は同じ発音、同じ言葉であった。
時に人々は東に移り、シナルの地に平野を得て、そこに住んだ。
彼らは互に言った、「さあ、れんがを造って、よく焼こう」。こうして彼らは石の代りに、れんがを得、しっくいの代りに、アスファルトを得た。
彼らはまた言った、「さあ、町と塔とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、全地のおもてに散るのを免れよう」。
時に主は下って、人の子たちの建てる町と塔とを見て、
言われた、「民は一つで、みな同じ言葉である。彼らはすでにこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはや何事もとどめ得ないであろう。
さあ、われわれは下って行って、そこで彼らの言葉を乱し、互に言葉が通じないようにしよう」。
こうして主が彼らをそこから全地のおもてに散らされたので、彼らは町を建てるのをやめた。
これによってその町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を乱されたからである。主はそこから彼らを全地のおもてに散らされた。
創世記(口語訳) 11:1〜9
バベルの塔建設時点まで人類は一箇所に集まっており、その後散らされたという聖書のエピソードを信じるなら、「高い建物を建てたらよくないことが起こる」という不安は人類のDNAに刻まれているのかもしれません。
冒頭のツイートを読んで皆が直感的に思う問題点は2つ。すなわち
- スーパーゼネコン5社全部辞退ってヤバくない?
- 修繕に20億円かけるって費用かかりすぎじゃない?
だと思います。
私はヤバいともかかりすぎとも思ってません。理由を列挙してみましょう。
スーパーゼネコン5社辞退の件:
復興とオリンピック整備と高度成長期インフラ補修に全力の現在、スーパーゼネコンはマンションの大規模修繕に応じるとは思えません。そもそもこのマンションは、三井建設・現三井住友建設が建ててます。スーパーゼネコンは自社施工物件なら修繕にも協力するでしょうが、相見積もりのためとわかってるなら見積もりすら出したくはないでしょうね。
また、タワーマンションの大規模修繕はスーゼネレベルではなく他の会社も問題なくできるはずです。
修繕に20億円かかる件:
絶対額でむしろめっちゃ安いのでは?と思ってしまいました。調べたところ修繕費用の正確な数字は20億ではなく、17.5億。これで1ヶ月・戸あたりに均すと
17.5億/(756戸*竣工16年*12ヶ月)=1.21万円/月・戸あたり
となります。
1.21万円の修繕積立が高いと思うならタワーマンションにそもそも住む資格がないでしょう。
また、修繕積立金だけでなく、駐車場料金からの補填もあります。このマンションの場合、駐車場料金収入は年1.5億円。管理費会計に一度繰り入れた後、修繕積立金への付け替えが年5千万〜8千万発生しています。
この駐車場料金繰り入れを計算に入れて、今回の修繕だけを考えるなら費用は戸あたり月1万円以下。外壁補修をきっちりやって防水をして、内装も壁紙カーペットまで全入れ替えとなる規模を考えれば相当リーズナブルといえるでしょう。
多額の費用が発生するエレベーターや機械式駐車場の入れ替えは今回の大規模修繕では発生せず、早ければ次(竣工30年くらい?)もしくは次の次あたりで費用発生してきますが、まだまだ長いスパン残っていますので、修繕積立金を今の段階で若干値上げして積んでおけば、十分に維持可能です。そもそもこのマンションの財政的には積み上がった金額の半額強を大規模修繕に使ったにすぎません。
このへんの話は、長期的視点が不可欠であり、タワーマンション理事会運営の巧拙が勝負を決めるところでもあります。タワーマンションは1回目の長期修繕後あたりで、20年・30年経ってもヴィンテージマンションになるのか、湯沢のマンションのようになるのかが決まっていくでしょう。
タワーマンションの平均所得は高く、理事会メンバーも多彩な人が多いので湾岸に関してはこの辺もあまり心配ないかと思います。
過剰な心配は人の思考を止めます。絶対額やスーゼネ辞退という表面的なものに惑わされないようにしたいですね。
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