マンションブロガーが答える

武蔵小杉のタワーマンションは災害に弱いのか

10/12に上陸した台風19号によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。 また、被災された方々に謹んでお見舞い申し上げますとともに、生活再建が早くなされること、心よりお祈りいたします。

さて、「史上最強の台風」「カテゴリー6」と言われた台風19号ですが、実際に過去甚大な被害を起こした伊勢湾台風並みの勢力を保って上陸したわけで、東京東側が水没したカスリーン台風以降、首都圏が半世紀にわたって築いてきた治水事業の総決算のような状態でした。東京東側が水没しなかったのは先人たちの努力と、雨雲のコースが若干西側を通ったからであります。

台風後、マスコミとネットの格好のネタになってしまった不幸な地域があります。そう、武蔵小杉です。
湾岸タワーマンションと時を同じくして、武蔵小杉にもにょきにょきとタワマンが建ち、この10年で最も変わった街のひとつになりました。武蔵小杉の新築タワマンの価格は豊洲の水準を超え、中古成約も豊洲よりも高い坪単価で取引されています。「タワーマンションが並ぶセレブタウン」そういう印象だったわけです。

実際は、大型店が駅前にある利便性と渋谷方面を始めとする鉄道アクセスが非常に便利だったので、「通勤時間を短くし、共働きで子育てをするという2010年代の生活スタイルに特化した街だった、それゆえ価格が急伸した」にすぎません。それは東京の湾岸エリアとて同じです。実態としては、セレブタウンというよりも、アッパー共働き勤労者がメインの街であります。

しかし、台風19号で浸水した一部のマンションで停電が発生。駅の周りが水没して土砂が堆積した事象でネットでは武蔵小杉が揶揄の対象になりました。そして、ネット上の捏造情報を元にした誹謗中傷はひどいものがありますし、「台風被害可哀想」のツイートの後に「武蔵小杉www」とつぶやく人って、脳みそどうなっているのかな、と思います(それが持たざる人の心理であり、更に武蔵小杉は人命に影響がなかった故ということでもあるのでしょう)。「武蔵小杉タワマン売却数、3日前2件 → 今100件を超えるw」という怪情報、私もTwitterのタイムラインで何度か見ましたけど、例えばこれ完全に捏造です。念の為、「武蔵小杉・駅徒歩10分以内のタワーマンション」の売出し件数を照会したところ、10/21時点で94件の登録がありました。このうち、台風の翌日以降の10/13に登録された物件数は7です。なお、たとえ売却の媒介依頼を受けたとしてもSUUMOに即掲載されるわけではなく、どう最速にまわしても3,4日かかります。現時点で掲載されているマンションで、台風後の売出し物件はほぼ無いと言い切っていいです。

さて、一部のタワマンで停電が1週間になるなど、これをもって「タワーマンションなんて住むもんじゃない」というコメントがネットに溢れていますが、タワマンは災害に弱いのでしょうか?答えは否です。

たしかに、今回の災害はマンションにとって基本インフラである、「電気」「ガス」「水道」の他にもうひとつ「排水」という隠れたインフラをあぶり出しにしました。トイレが流せないのは、ポンプ系統が水没したからで、復電したとしても、ポンプが復旧しないと流すことが出来ません。

タワーマンションに限らず、大規模マンションのインフラは、地下に集約されていることが多いのです。地下で一旦電気ガス水道を受けて、そこから各戸に小分けして配るというイメージです。

そして、今回長期間にわたりダメージを受けたマンションは、エントランス階の浸水は土嚢や止水板で食い止めたにもかかわらず、地下ピットへ浸水してしまいました、そして基幹インフラが水没してしまった、ということでした。

しかし、この現象は武蔵小杉特有の問題ではありません。100mmの土砂降りが数時間にわたって振り続けたとき、アスファルトとコンクリートに覆われた都市部のインフラでは対処することができません。雨水の排水が追いつかずに、簡単にマンションのエントランスまで水が来ます。このとき、地下の縦穴に水が侵入、もしくは地下ピットからの染み出しで機械に水が被ることになれば、たちまちそのマンションは機能を停止します。高級住宅街だろうが、下町だろうが関係ありません。配電盤や変電器が水を被ると、部品ごと交換しないと復旧できません。

これを持ってタワーマンションが災害に弱いということではないでしょう。タワマンは土砂で家が流されるということはありませんし、泥を被って家財ごとリフォームしないと住めない、ということもありません。上記のように武蔵小杉のタワーマンションは災害から1週間程度で復電したとの情報がありました。

新浦安の相場が回復したのは震災から3年後。武蔵小杉も短期的には売られるでしょうけど、圧倒的な利便性は依然として健全であり、市場は忘れますからそのうち回復します。震災より風評ダメージの回復は早いでしょう。
数十年に一度の割合で1週間程度機械が停止するリスクがあると想定するなら「利便性を重視してハザードマップで地歴が悪い場所に住むことを選択するなら、戸建てよりタワマンの方が良い」と考えたほうが健全です。

繰り返しますが、局地的大雨が連続的に都市部で起これば武蔵小杉以外のどこでも容易に水没しますし、被害が出るのです。その時、戸建てとマンション、どちらが命は安全ですか?

 

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コメント

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    • 小杉タワマン住人
    • 2019年 10月 22日

    浸水しなかった小杉タワマンの住人です。
    このような冷静な意見を聞いて、ほっとした思いです。
    マスコミが火をつけるような表現で煽っておいて、
    それに乗ったネット民の聞くに耐えない暴言の数々。
    自分自身は、湾岸と武蔵小杉のマンションで迷った末、
    家族も含めた利便性により今のマンションにしました。
    今回の件で、いわゆる武蔵小杉エリアの一部が冠水したのは事実です。
    実際にはさらに東寄りの向河原駅近くでは、戸建てや低層アパートが
    多いため一階が床上浸水したところもあったようです。
    ほとんどのタワマンでは一階に住戸がないため、浸水があっても
    住戸に被害が発生しないのは、大きなメリットだと思います。
    また、タワマンの場合、防災センターと24時間管理があり、
    今回の台風でも、管理人さんや警備員さんが徹夜で対応にあたっていました。
    タワマンは水害時に危険、みたいな論調がありますが、24時間管理の心強さも
    タワマンを含めた大規模マンションのメリットだと感じました。
    幸い、私の住んでいるマンションのところまでは水が来ず、
    念のため設置した止水板も役に立つことはありませんでしたが、
    今後、さらに水害に強いマンションにするための検討は、理事会を中心に
    行っていくことになると思います。
    今回、残念ながら停電してしまったマンションでも、
    原因の究明と対策が取られると思います。
    だらだらと書いてしまいましたが、いち武蔵小杉タワマン住人の思いです。

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