購入検討初心者シリーズ

都内マンション価格を高騰させたアベノミクス以降、なぜ戸建て価格は上がらないのか

前回、「マンションだけが高騰している」という国土交通省発表の不動産価格指数のデータを見て、読者様からこんなコメントをいただきました。

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国土交通省の不動産価格指数のデータは非常に興味深いのですが、
一戸建てが値上がりしていないのはなぜなのでしょうか?
私の考えられる仮説は以下なのですが、のらえもんさんの考えがあればエントリを起こしてみてください。

・仮説1
戸建てのデータ精度が低い
(どのようにデータを集めているかは不明ですが、売り主申告中心だと小規模・非上場業者の多い戸建てのデータはいいかげんになると思われます(マンションは大手の割合が大きいのでコンプライアンスの厳しいご時世比較的正確?))
・仮説2
戸建てはとんでもなく不便な地域の占める割合が高い
(東京・神奈川・埼玉南部が中心のマンションに対して、戸建てはその他の関東地方の割合が大きい。ミクロで見てもバス便とかの割合が高い。個人的には理解できないのですが、匿名掲示板でもマンションなら駅徒歩5分以内、戸建てなら20分以内通いというダブルスタンダードの人が結構いそう)
・仮説3
細切れの土地は戸建てにしか使えないから値段が上がらない
(マンション用地はホテル・オフィス・商業施設などと競合するから上がってる。)

仮説によって将来性も違ってくると思うので、気になってます
(仮説1なら将来性はトントン、仮説2なら将来はマンション優位、仮説3なら戸建て優位の可能性も・・・)
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なるほど、読者様はマンションと戸建てを両天秤にかけて、データから将来どちらが有利かをお考えということでしょうか。先日のデータはこちらで公表されています。ちなみに、マンションについては新築が含まれず、中古取引のみが対象です。

仮説1「戸建てのデータ精度が低い」ですが、元データは不動産業者が利用するレインズからひっぱっていますし、統計的に有意なサンプリングやデータのクレンジングも行われていますので、数値は実態を表したものと考えて良いです。データはどのように作られているかは、不動産価格指数(住宅)の作成方法をご覧ください。

仮説2「戸建てはとんでもなく不便な地域の占める割合が高い」は、「とんでもなく不便」という言葉以外は同意します。
データの元となるマンションと戸建てで、平均するとだいぶ交通利便性が違うのではないか?条件が違うのでは?ということですね。不便な場所に原則マンションは建ちませんし、建っていたとしても取引は極端に細ります。不便な場所では取引が行われにくいのは戸建てもそうですが、首都圏の主要駅において、駅前即戸建てという場所はほぼありません。駅前は商店街やビルとマンション、徒歩10分〜戸建てゾーンに入ってくる場所が多いと想像します。そういえば、妻の友人(専業主婦)は、都心から鉄道で30分ほど離れた場所の戸建てを買ったのですが、広さや日当たりを重視すると駅から徒歩25分という物件しかなく、奥様が毎日旦那様を車で送り迎えすると言ってました。こうした生活スタイルは、夫婦どちらも都心へ通勤するような共働きの形態ですと成立しえません。

一歩目線を進めて考えると、上グラフの差は、戸建て・マンションという種別を問わず「近年は公共交通の利便性が良い住宅であることが重視されている」ことの証左となっているわけです。このブログでも散々とりあげている、住宅購入適齢期世帯における共働きの増加が、交通利便性が良い物件の人気を押し上げているのです。

(いや、こうした住宅も超憧れますけどね)

仮説3「細切れの土地は戸建てにしか使えないから値段が上がらない」。これは、以前から言われていることです。
特に東京23区の商業地で、大きな容積率が取れる場所であれば、マンションだけでなく、ホテルや商業施設、ビルといった用途でも使えます。土地の用途が幅広いわけで、景気が良くなれば、わかりやすく値段が上がります。

ここ数年は、マンションデベロッパーとホテル事業者が入札で争って、ホテルが勝つというのが多くなり、マンションの新規供給が減っています。土地の仕入れ状況を見れば、新築マンションはこれからしばらく供給が大きく増えそうにないことがわかります。ホテルチェーンで目立つところでは近年、APAがガンガン増えていますよね。
新築マンション需要は継続的に発生しますから、供給減が値段の高止まりを発生させています。そして新築マンションを諦めた人が一定数以上中古マンションに流れるので、価格指数が右肩上がりになるのです。

といっても、私がモニタリングしている場所で見ると、戸建ては値段が上がっていないわけではなく、かなり上がっていますね・・・通勤に便利な場所で徒歩分数が個人的に許容範囲の場所をモニタリングしてますけど、以前なら4980万円だったのが、同スペックで5980万円くらいになって地元民の目線と合わずに売れ残る、というのを見ます。マンションのほうが上がり幅が急峻だったので、都心に近い場所や郊外中核駅などでは、マンションよりも3階狭小戸建ての方が安いという逆転現象も発生しています。セカンダリー市場を意識せず、3階への上がり下がりが苦でなければ、それもアリだと思います。近年のマンションは管理費も高くなっていますし、駐車場が付いていれば、家計はかなり助かりますから。

住宅購入はいつまでも先延ばしするものではありませんから、自分と家族の生活スタイルと経済的合理性、そしてロマンを天秤にかけてどこかでえいやって決める作業なんだと思います。

 

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