Twitterで「シティタワーズ東京ベイの間取りはなぜ良いのか?」について呟いたところ反応が多かったので、改めてこちらのブログでまとめてみます。
まずはこちらの間取りをご覧ください。
シティタワーズ東京ベイの間取りは、非常にシンプルです。
1LDK:40平米、2LDK:55平米、3LDK中住戸:70平米、角部屋3LDK:80平米でほぼ統一されています。間取りの良さは上図面を見ていただければわかりますが、3LDKならすべての部屋がバルコニーに面しており、内廊下マンションにありがちな「行灯部屋」がありません。
また柱はほぼ外出しであり、専有面積を柱の面積で”捨てている”というのも発生してません。洋室(1)、(2)はリビンクから廊下を挟んだ向こう側であり、プライベート感が保たれています。リビングはほどよい長方形を保っていて、12畳ながらダイニングとリビング機能を分ける家具配置も可能です。洋室(3)がプライベート感を出すのが難しい引き戸なので、普段は2LDK、いざというときに3LDKとして運用するのが良いでしょう。
しかし、いい間取りを見ると疑問をいだきませんか?
「いい間取りがわかっているのなら、他のマンションもみな同じにすればいいのに。なぜ物件によって間取りは大きく変わるんだろう?」
考えてみると間取りというものは、土地形状と法規制から逆算した最大公約数の集合体であり、なかなかいい間取りを並べるというのは難しいものです。
建物は、土地の広さx容積率で大きさ=売りものとなる最大面積が決まります。また建ぺい率などで建物の建築面積も決まります。
建物すべての面積が販売用となるわけではありませんが、なるべく売り物となる面積を効率よく、そして過不足なく切り取って販売したいとデベロッパーは考えます。
ただし、建物は様々な法規制を受けます。敷地形状がいびつであれば、建物も同じようにいびつになりますし、斜線制限を受けて上階を凸型につくらざるを得ない場合もあります。最上階から階段状に並ぶルーフトップ付き部屋は斜線制限の影響です。
内廊下タワーマンションの構造は、基本回の字と考えて良いです。真ん中には日照がありませんからエレベーターと共用廊下を配置することになります。建物の表皮部分にバルコニーや窓を作って専有部にします。文章で説明すると遠回りなので図で説明します。
売り物になる面積をどう切り出して部屋にしていくのか。羊羹の切り出しと似ています。北側は1LDKなど狭めに刻んで坪単価を若干上げ、南側は広めの3LDKなどプレミアムを付けて売り出す、同時に角部屋は玄関部分の入り口やクランクを最小にすることを考えながら広さを決めていきます。
しかし、この回の字の中部分が小さかったらどうでしょう?実際に形状が太いタワーマンションではよくあることです。奥行きが長くなると、田の字間取りが最適解となるはず…ですが、内廊下マンション企画だと共用廊下側に部屋を作れないので、部屋の配置に相当悩むことになります。
逆に、回の字の内側が大きかったら?それは専有部の奥行きが短いことを意味します。適正な奥行きを考えると、スパンが広いほど良い間取りになるわけではありません。下の事例だと、北側はいいけど、南側は微妙…になったりします。それを防ぐために、共用廊下を若干ずらしたりすることで、エレベーターを北側に設置して他の向きの奥行きを稼いだりすることになります。
説明は後ほどするとして、シティタワーズ東京ベイは、平米数毎の理想の間取りを最初に決め、そこから建物形状を逆算して決めています。
こうすることで、とても効率の良い間取りがずらっと並ぶこととなります。売主の住友不動産は販売が長期化することで有名であり、このマンションは商品性を「間取り」「規模感」「商業一体開発」に寄せています。間取りが良ければ後々に効いてくるというわけです。
話は最初に戻ります。「土地形状と法規制から逆算した最大公約数の集合体であり、なかなかいい間取りを並べるというのは難しいもの」といったじゃないか、そうですそのとおり。しかし、シティタワーズ東京ベイはその例外から外れるのです。彼らは一体開発として大きな土地をまず買い、土地の持ち主だった東京都から最初に提示された条件、住宅とホールと商業施設の切り出し方は住友不動産が自由に決められたのです。このため上記のチャレンジができたのでしょう、商業施設チームより住宅チームのほうが社内的に発言権が高かったからできた芸当かもしれません(推測で書いています)。
当時の記事はこちら:
だからこそ、シティタワーズ東京ベイの間取りは良いのです。70平米でこれ以上の最適化はなかなか難しいと言えるでしょう。75平米、82平米となるとまた違うでしょうけど、彼らは40・55・70・80と4つの部屋の大きさの変数を固めた上で、この制限の中で理想の奥行きとスパンを持つ間取りを作り、そこから建物形状と敷地面積を確定した…シティタワーズ東京ベイは「70平米」クラスの間取り金字塔として、湾岸エリアにずっと残り続けるのではないでしょうか。
有明は一人の担当者が商業・ホール・住宅を最後までやりきったんですよね。