野村不動産という会社はとてもユニークなところがあって、大規模な物件ではブロガー向けモデルルーム見学会というのを開催されています。こちら、豊洲駅前のモデルルームでも開催されるということで、いつもは個人客としていく私ですが、今回はじめてスムログでお馴染みのメンバー達と訪問してきました。
豊洲から東雲へ晴海通りの橋を渡るとグランドシップ(パチンコ屋)があります。この隣にいま、大規模なマンションが建設中です。今回紹介する豊洲駅徒歩10分の「プラウドシティ東雲キャナルマークス」です。オーバル型というとても珍しい形をしていて、日本では二事例目とのこと。分譲マンションとしては初のようです。
このエントリの画像出典:プラウドシティ東雲キャナルマークス公式Webページより
コンセプトは「CANAL ZERO 湾岸都心から、豊かさを変える。」
このZEROというのは、いうまでもなくオーバル型を意味していて、棟に囲まれた4000平米の中庭とそことシームレスにつながる1Fに共用施設を集中配置することにより、「真新しい都心ライフ・豊かさ」を目指すということでしょうね。また、ZEROは豊洲・東雲エリアの無限の可能性も暗喩しているとのこと。だんだん書いていて意味がわからなくなりました。
コンセプトムービーを見させていただきましたが、なぜかニューヨークばかり出てきます。何が言いたいかといえばNYのマンハッタンのようにオンとオフが近く、緑と水と利便施設がある生活がここなら手に入りますよ、とのこと。見た感じニューヨーク7:豊洲3:東雲0くらいの映像割合だったのでもう少し東雲を映してあげた方がいいと思います。(擁護しますと、勝どきザ・タワーの外人が自分語りをするムービーも勝どきはほぼ出ませんでした)
さてデベロッパー視点でこの立地を考えると、土地形状が北側に凸な形をしていますのでコンサバティブなロ型配棟とするにはちょっと収まりにくく、またどう配置してもパチンコ屋駐車場と接する部分が長くります。かといって、北側運河沿いにずらっと並べるのもちょっともったいないし、南側の駐車場を見下ろすマンションになってしまう。それじゃタワーマンション?と考えると建設費高騰のさなか、更に戸あたり単価が高くなって、もはや誰も買えない値段になってしまう。それにタワマンを建てると”2020年”というターゲットイヤーに間に合わなくなる。。。いろいろな制約条件とシミュレーションの結果、このオーバル形状に決定したのだと考えます。
もちろん物事にはメリットとデメリットがあって、、、と、この話はここではなく最後の総評欄にしましょうか。
物件概要:
- 物件名:プラウドシティ東雲キャナルマークス
- 15階建て4棟連結オーバル型マンション
- 総戸数472戸
- 東雲イオンまで徒歩1分
- 東京メトロ有楽町線 豊洲駅 徒歩10分/りんかい線 東雲駅 徒歩15分
立地・周辺環境
東雲キャナルコートより道路を一本挟んだ向こう側。北側を運河・南側を道路に挟まれた場所にこの物件は建っています。
眺望は運河に面した北側が開けてはいるのですが、オーバル中庭を活かすために、あえて北側の棟は南向き(中庭向き)としています。また南棟と東棟は2階建てとして、北棟南向き住戸の採光にも配慮がされています。ただし、自己射影が起きるとのことで、どの部屋にどう起きるのかは、モデルルームに資料がありますのでご確認ください。
(客席模型では周りの建物の高さが確認できます)
道路を挟んだすぐ向こうには都内唯一24時間運営のイオン東雲が。すぐそばの橋を渡ればもう豊洲です。本物件は東雲アドレスではありますが、最寄り駅は有楽町線豊洲駅となります。また、上図マップは徒歩経路を表したものですが、運河沿いは行政の護岸工事が進行中。工事が終了すれば、マンションと直結となり、わずかな差ですが近くなりそう。もしかして徒歩分数が短縮されるかもしれません。
ニアリーイコール豊洲、という立地ではありますから、歩いたところに豊洲の数々の利便施設があります。ららぽーと豊洲・ビバホーム、昭和大学江東豊洲病院、豊洲公園…そういった豊洲の利便性が享受できる場所に立地しています。
建物・内装
さすが野村不動産。内装は、「ちょっと良い」ランクを使われてます。特に水回りや手で触る場所には細かいこだわりがあり流石だと思いました。ただ、モデルルームはプレミアム最上階のオプションマシマシのみの設定で、一般階住戸は「VRでご覧になれます」という割り切り方でした。天井高が違うだけに、体験でわからないこともありちょっと残念。
- 天井高2650mm/15Fのみ、2550mm/14・13・12Fのみ(ガーデンコート・ブライトコート)、2450mm(その他一般住戸)
- 順梁2200mmハイサッシ/15Fのみ、その他の住戸は2100mmサッシ
- 温水式床暖房
- ディスポーザー有
- タンクレストイレ
- 魔法瓶浴槽
- IoT対応で、外出先からお風呂の設定等が可能
玄関前のタイル貼りもしっかりとしていて、コストダウンが激しい昨今のマンションとは一味違います。
さて、オーバル型がどのように専有部に影響を及ぼすのか実際の間取りから見てみましょう。
こちらは、ガーデンコートのほぼ真ん中、73.70平米のGIタイプとなります。スパン幅は6300mmで若干狭め。そのかわり、玄関がクランクインになっていますね。
柱の位置が横一直線にならず、ズレていることがわかります。ここがカーブしている部分で、これにそって部屋に対して斜めに梁が出ます。ただし、バルコニー側についてはほとんど専有部への影響はないとの説明がありました。一方北側洋室1では梁が出ている箇所が天井高1900mmどーんとなる部分も。直線型にするためにこのあたりは、モデルルームでご確認ください。
一部は稼働収納や「ウゴクロ」などの設定もありますが、全戸の3割程度の設定でした。このウゴクロ、可変性はとても良いのですが、洋室間の音が筒抜けになるので良し悪しですね。なので全戸設定にしなかったのだと思います。
新らしさとしては、排水管にサイホンの原理を採用して水回りの可変性を高めたため、一部住戸では、アイランドキッチンへの変更を無料で行えないか、いま施工側と確認中とのこと。
共用施設
この物件は中庭推しです。これまでの湾岸大規模物件ですと、公開空地と総合設計により、容積率の割増を受けるのが基本ですが、本物件は容積率の割増認定をあえて受けませんでした。そのかわりオーバル型の中側に公開空地でないプライベートガーデンを作りました。その中庭とシームレスにつながる10の共用施設を配置しています。
共用施設でない1F部分は駐輪場やメールコーナー、ゴミ捨て場、保育施設など。1Fに住戸は設定されていません。
1:パーティーラウンジ
2:キッズラウンジ
3:ラウンドリーカフェ
4:ゲストスイート(1つ)
5:マルチルーム
6:DIYデッキ
7:ガーデンズカフェ(ドリンクと軽食が出る模様)
8:ライブラリーラウンジ(書籍や雑誌が入れ替わるとのこと)
9:グランドエントランス
10:ワークスタジオ(Wifiを準備した仕事・勉強スペース)
と、最近流行りのライブラリーや勉強スペースを入れた感じですね。「ゲストルームってひとつしかないんだ」という声に、デリカシーの無いことに定評がある某ブロガーは「いいんだよ、どうせ予約できないんだから!」と大声で言い放ってブロガー見学会会場が凍りつきましたが、これはある意味真実で、どうせピーク時に思ったように予約できないのならすぐ近くにもホテルがオープンしますし、そちらを使ったほうが良いかもしれません。予約が思うようにできないゲストルームをあと2つ増やすくらいなら細切れで活躍できる、ワークスタジオやライブラリーを整備したほうがいいですね。
価格
えー、物件オープン前からTwitter等で話題になっていた価格です。Twitter上で流れていたのとは変わったフォーマットで渡されました。いつものように7100万円台は、末尾00~99万円とのことでしたので、「7150万円」と仮置きして坪単価を計算しています。販売担当者によると、第一期でよければ200戸、少なくとも1/3の売出しはしたいとのこと。
プラウドシティ東雲キャナルマークス 予定価格表(201810Ver.)
(クリックすると大きくなります)
追記20181211:こちらの価格表は古い情報となりました。最新情報はこちらから。
営業さんから、「全戸坪単価平均330〜340万円のラインで考えている」とアナウンスが有りました。渡された価格表に出ている戸の平均坪単価は333.4万円で確かにこのラインに入ります。実際には、全戸南向きで自己日影がないフロントコートの価格が入っていませんし、東向きのブライトコートを入れても、もう少しだけこの数字は上昇しそうです。ということで、現時点では平米100万円超えオーバーは確実、となります。
タワーマンションの階数価格差に見慣れていると、1階あがるだけで100万円変わるのに驚きますが、坪300くらいの板状マンションではこの階数差が普通です。フロントコート(11F)を超えるガーデンコート12F以上の部分は価格は大部分明らかにされていませんが、一段の価格ジャンプがある模様です。
気になる、西側パチンコ店の駐車場とかぶるのは、アクアコートのAAとAB列、あとわずかにフロントコートFN列の5階まで。これは、模型で確認いたしました。価格表を見て分かる通りこの部分は意図的に下げられています。2F・3Fの公開は見送られていますが、おそらくここを値段の目玉とするのでしょう。
(若干わかりにくいですが、手前の透明な建物がパチンコ屋の駐車場)
ガーデンコートGMとGNの価格差は誤植ではなく、間取りと隣の棟との自己日影の差ということでした。それにしても、パチンコ屋駐車場目の前の住戸より、中庭・南向きが割安とは…
しかし、3LDK73平米に7000~8000万円がずらっと並んで、まさに新時代の価格表という感じがいたしますね。面積と方角の差もありますが、プレミスト有明ガーデンズと比べて南側住戸は1000万円近い差がありますので、検討者が分かれるような気がします。
検討者は、圧倒的に湾岸エリアが多く、ファミリー:プレファミリー比率は6:4くらいとのこと。「近くのタワーマンションにお住まいで、タワーマンションに憧れがあって住んでみたけどもう飽きた、これからは地に足の着いた生活を送りたい、という方が見学されている」ということでしたが、まっっったく同じセリフを先日聞いたような気がしますね。たしかプレミ(略)
モデルルームの模型で確認できる通り、この物件は角部屋認定できる部屋が極端に少なくなってます。4棟をつないだ形なのですべての棟の両端に角部屋がある、と思いきや、まったく窓がない部屋も。中庭の広さや建物形状がどう工夫されているか、模型をよく見るとわかることいっぱいありますね。
維持費
某所で上がっていた予定管理費等一覧を参考にすると、管理費は平米あたり343円、修繕積立金は同140円でした。これにインターネット利用料1000円にコミュニティ形成費300円を合わせると、たとえば74.15平米のお部屋は、37,480円がかかることになります。
→(追記20181009)管理費が変わったようです。管理費は平米あたり315円になり、管理費等全部込みで月額35,080円と当初予定より2000円強安くなった計算です。
管理費が高いのでは?とブロガー見学会でも声が上がってました。周辺タワーマンションと比べてもかなり高水準でして、ここを超える平米あたりの管理費は、もはやブリリア有明シティタワーとブリリアマーレ有明くらいしかありません。
→(追記20181009)315円でも板状としては周辺マンションの中で一番高くなります。少なくとも、豊洲・東雲エリアでは、平米あたりの管理費単価が一番高いマンショングループとなりそうです。トップがSKYZ・BAYZでその次くらいでしょうか。
なぜこんなに高いの?→「庭の管理と24時間警備を導入しているから」というのが答えでした。もう、7000万オーバーのマンションで月1万円高い安いはもはや誤差なのかもです。
容積率200%に据え置いた影響がここに出ているのかもしれませんね。敷地17,700平米を472戸で管理しなければいけないので。他は容積割増して戸数を増やしてますので戸あたりの負荷が少なくなります。
周辺相場
豊洲・東雲エリアには大規模なマンションが立ち並んでいる地域ですので、相場が明快にわかりやすいエリアです。数年に1回しかマンションが出ない場所と違って、比較が容易です。検討者が本マンションの比較物件を考えるとしたら、大きく分けて以下4つのパターンかと考えます。
- 価格帯が被る周辺新築マンション。プラウドシティ越中島、プレミスト有明ガーデンズ、パークタワー晴海、シティタワーズ東京ベイなど。順番は、検討者がかぶり安い順です。プラウドシティ越中島の残りは30程度とのこと(営業談)
- 東雲エリアの中古マンション
- 豊洲エリアの中古マンション。特に豊洲4丁目の板状マンション
- 価格帯が近い東京近郊の新築マンション。例えば、ザ・パークハウス 東陽町翠賓閣、プラウド武蔵境テラス、ブリリア浦和仲町、品川イーストシティタワーなど
4番はもう街が全く違うので本稿では触れないとして、1・2・3の順に考えていきましょうか。
1:周辺新築との比較(本音ベース)
・プラウドシティ越中島:同じ湾岸だが微妙に街の性格が違う。基本的に東京駅行の越中島駅+門前仲町まで歩くことができるマンションと考えたほうがいい。規模感は東雲が上。価格帯も東雲が上。家事時短などはこちらには導入されず。
・プレミスト有明ガーデンズ:有明と東雲エリアは全く性格が異なるエリアながら、ここ10年相場はかなり近似していた。プレミストは東と北西向きしか向きがないため、商品企画としては東雲の方が良い、価格も東雲の方が高い。本物件は近隣物件ではあるものの、購入希望者がマンションに求めるものがかなり違うと推量。むしろ価格帯的にプレミスト有明は越中島と被るのかも。
・シティタワーズ東京ベイ:かなり値上げしたウエストタワーはともかく、セントラルタワーなら総額で同価格帯となる。駅チカタワーマンション、間取りの秀逸さ、商業施設と一体開発などの総合的な魅力はシティタワーズ東京ベイの方が上。有楽町線による都心方面へのアクセスは本物件のメリット。
・パークタワー晴海:坪単価で比較すればほとんど同価格帯。ただし、専有面積が広めなので総額はこちらの方が上。中央区で高品質なタワーマンションという面では、こちらの方が商品企画として上。パークタワー晴海は月島・勝どき駅から遠いのが一番のネックだが、こちらも豊洲徒歩10分…
後半2つは、タワーマンションですので修繕積立金や固定資産税を考えると、こちらの方が若干維持費安くなるでしょう。繰り返しますが7000万円以上という価格帯では、毎月の維持費はほとんど”誤差”です。検討者としてオーバル型という特殊な形が響くか、そもそも有明・晴海エリアよりも豊洲・東雲エリアの方が好きかどうかの勝負かと。
これから待つとしても、ブリリア有明4棟目も東急豊洲タワーもきっと高いので、「いま家を買う理由」がこれを読んでいる貴方にあるのでしたら、待ってもそんなに幸福ではないかもです。
2:東雲1丁目の中古マンションとの比較
東雲1丁目はタワーマンションも板状マンションが混在するエリアなのですが、成約事例全部混ぜた上で、2007年竣工のキャナルファーストタワー以降に建ったマンションの事例をプロットするとこんなグラフになります。
プラウドシティ東雲キャナルマークスと重ねますね。中心を340くらい、全戸の8割が入る部分を帯にしました。
新築であることの価値と築年数補正を合わせて、まぁこれくらいの差を付加価値として販売側は見込んでるということになります。
3:豊洲4丁目の板状マンションとの比較
豊洲のマンションの中でも、プライヴブルー東京+東京フロントコート+スターコート豊洲+オークプレイス豊洲が直接の比較対象かと思います。4マンションのここ1年の成約事例はこんな感じ。かなり狭い範囲で取引されていますが、最近は上昇中ですね。
上記4つのグラフから分かることは、
- 豊洲・東雲の比較対象となる周辺中古マンションは坪240〜280くらいの取引がされている(坪300近いのはパークタワー東雲のみ)
- 上限キャップがかなりきつく、坪280ラインを突き抜けるマンションはない
- 結論としては、本マンションの新築プレミアム分は1000万円以上である
ということです。ここが特別なのではなく、今でてるライバル物件もこれから新築販売される物件も同じようなものでしょう。
新築プレミアムが相対的に少ないのは晴海くらいでしょうか。
総評
実は、この物件の建築計画が発表される前、プラウドタワー東雲から敷地を見ていました。自分だったらどう建てるのだろう?タワーマンションだろうか、それとも多棟板状?といろいろ想像していたので、オーバル型はよく考えたなと思ってました。
オーバル型をとった理由はその1で述べたようにパチンコ屋と敷地形状からの逆算かと思いますが、中庭に視線を落として1Fに共用施設を集中配置するアイデアは、敷地と隣地がもたらす制約条件の中でよく練られていると思います。そして、特徴的な構造を活かして外観を非凡にするための様々な工夫も見受けられます。総合設計で300%にすることも可能だったと思いますが、そのままオーバル型の上に積み上げると15Fと20Fになってしまい、肝心の中庭に全く日が差さない悲惨なことになってしまったでしょう。東・西棟を11Fに抑え込んだのは、中庭への日照を最大限配慮した結果です。
そして気になる修繕費についてもタワーマンションより低く、一般の板状よりは高いというシミュレーション結果が出ているそうです。
ただ、安いかと言われれば、「いやぁ素直にお高いですねぇ」となります。
残念な点は、オーバル型と容積率200%で戸数を抑え込んだことにより、管理費が高騰してしまったこと。修繕積立金はともかく、管理費がタワーマンションより高くなってしまっては、板状の最大の優位点を消してしまったといっても過言ではないです。私は本マンションを唯一無二の存在ではなく、特殊な形状をした板状マンションと理解しています。
総額7000万円となるとサラリーマンが住宅ローンを組んで買える限界です。そこで更に月3.5万円〜の管理費等、そして駐車場月2.8万円〜になると、駐車場を1万円以下で借りられる東京フロントコートなど豊洲板状マンションとの実質的な差が…
この価格水準のまま売れるとすると、東雲エリアに突如として、別のライフスタイルと価値観を持つ方々が大挙して引っ越されてくることになりそうです。新築マンションにおいて坪30の差は別世界です。ましてや100くらい差があったら。
最後に、家電芸人徳井さんが言ってた名言で締めたいと思います。
「買いたい時が、買い時です」
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