のらえもん宛に実際に来た相談・質問に対して、個人的な返信後、あらためてブログ上でお答えする、ケーススタディー集です。今回もなかなかパンチのある質問が来ましたので、あらためてブログ上で考えてみましょう。
帰国から契約したマンション入居まで約1年あります。この間で物件を購入して1年後に売却、そして契約したマンションに入居ってできますか?
画像出典:NHKクローズアップ現代+より。これぞ空中族!って感じの質問ですね。
Q:
のらえもんさんこんにちは。いつもブログ拝見しています(中略)
私は現在、海外駐在中ですが、本年末頃に帰国の見込みです。先日とあるマンションを契約したのですが、入居は2018年半ばのため、帰国後約1年間時間があることになります。
当初、この期間賃貸をと考えていたのですが、賃貸では中々質の良い物件がないようです。そこでふと考えたのですが、年末に帰国にあわせて即入居可の中古マンションを購入し、1年後、新居への入居タイミングで売却できないかなと思った次第です。
通常のサラリーマンで、住宅ローンを活用する予定なのですが、さすがに中古マンションで住宅ローンを使い、新居入居タイミングで売却、返済し、新居引渡しにつなげるというのは無理がありますでしょうか?
おとなしく1年間賃貸にした方が良いかなと思うのですが、もし何かアドバイスがありましたら頂けると幸甚です。宜しくお願いします。
A:
できるできないで言えば「できる」としか言えませんけど、それはカネに糸目をつけない場合で、ご質問の方は「負担はこの間賃貸物件を1年間借りた場合と同程度」で同じことができるか、と聞いているのだと思います。ちょっとざっくりコストを考えてみましょう。
賃貸物件を借りる場合(月額25万円・1年間・礼1・敷1で敷金は相殺で帰ってこないものとする):
家賃:300万円(25 x 12)
仲介手数料:25万円
礼金:25万円
敷金:25万円合計:375万円
中古物件を購入する場合(価格6000万円・頭金入れてローンは5000万円と仮定):
仲介手数料:200万円
登記費用・印紙代・火災保険・固定資産税清算金等:約30万円
最低限のリフォーム代金:50万円
住宅ローン(変動・保証料内枠方式・事務手数料を抑える・金利1%)
住宅ローン保証料:内枠方式なので金利に含まれる
住宅ローン事務手数料:5万円
印紙代と登記費用:20万円
返済費1年分:170万円、うち元金分120万円
管理修繕費+固定資産税:約40万円
合計:約530万円
更に売却時に同額の仲介手数料約200万円と印紙代などがかかってきますのでざっくり210万円かかるとすると、同額で売れたとしても購入パターンの総コストは725万円、住宅ローンの元金充当分を差し引けば605万円となります。築年数1年経つ毎に坪4万円下がる沖理論を信じれば、21坪70平米のマンションの値下がり幅は84万円。
賃貸との差は314万円。あ、ひとめで無理ゲーっぽい。
物件価格6000万円ですので往復5%のマージン、たとえば買うときに2.5%割安な物件を買って売るときに2.5%高く売れば、ほぼ賃貸とイーブンとなる計算になります。のらえもんに、これできるか?と言われれば「購入選定に数ヶ月かけても良い」・「いまの経済環境が変わらない」、そして「湾岸タワーマンション」という前提なら確実にできます。
湾岸タワマンについてなら一応相場を知っていますし、実際にこの辺に住んでいますから地域情報も明るく、フットワーク早く対応できるからです。リフォームも勘所と腕のいい職人を知っていて自身で発注のコントロールができれば、この予算でもそこそこできるでしょう。
でも、この地域にまったく地縁のない一般の人が同じことできるか?これは難しい、かなぁと。海外にいま住んでいらっしゃる方ならなおさらで、情報を持たない状態で人に任すということは、その分のマージンがのっかるということですからねぇ。
長文、おつかれさまです。
プロの視点から申しますと
名義を変更する場合に必ず気を付けなければならないことは税金関係です。
同額でも減価償却により利益アリとみなされます。
まして今回は5%以上の利益を想定ですよね...
3千万円控除と住宅ローン控除、今回のケースですと併用不可。
このケースですと、ローン控除使うほうが断然有利。
となると、短期譲渡益課税金額分を考慮した相談でないと、
あとで大変なことになると思います。
>>ちすにちのいさま
ありがとうございます、そうでした税金考えないといけないですね。。。
ただ今回のシミュレーションですと、仲介手数料の往復分等が経費で引けますから税金はかからないのでは?と考えております。
資金的に許されれば、最初のマンションはそのまま賃貸に出すという手もありますけどねぇ。
のらえもんさん、こんばんは。
コメントに返信頂き、有難うございます。
改めて計算してみました。
長文となってしまいましたが、ご検討下さい。
のらえもんさん想定での収支損得
中古物件:相場価格6000万円 土地建物の比率は半々
① のらえもんさん、購入金額:5850万円
② のらえもんさん、売却金額:6150万円+公租公課清算金【6万円とする】
③ リフォーム費用50万円
④ のらえもんさん、経費になる取得費用:
仲介手数料+所有権移転登記費用+契約書印紙+取得税+公租公課清算金
196万円+25万円+3万円+0万円+6万円 = 230万円
⑤ のらえもんさん、経費にならない取得時~売却までに支払った費用:
管理費等+公租公課+火災保険料+ローン事務手数料+印紙代+抵当権設定登記費用
+保証料込み変動元利均等返済ローン金利1年分
40万円+12万円+1万円+5万円+2万円+9万円+28万円 = 97万円
⑥ 減価償却費
建物1年分 → 2925万円×0.9×0.031×1年= 816,075円
リフォーム分→ 50万円××0.9×0.031×1年= 13,950円
便宜併せて83万円とみなします
⑦ のらえもんさん、経費になる譲渡費用:
仲介手数料+契約書印紙
205万円+3万円 = 208万円
⑧ のらえもんさん、経費にならない譲渡費用:
抵当権抹消登記費用
2万円
⑨ 譲渡金額-(購入金額+リフォーム費用+購入費-減価償却費)-譲渡費
6156万円-(5850万円+50万円+230万円-83万円)-208万円 = -99万円
※ 譲渡益課税はありません
⑩ 実際の購入の場合、収支計算
支出金額:5850万円+50万円+230万円+97万円+208万円+2万円=6437万円
6437万円-6150万円=287万円の持ち出し
2.5%安く購入し、2.5%高く売却しても、287万円の持ち出しとなり、空中族どころではありません。
ただし、賃貸の場合より持ち出しは88万円安くはつきます。
といっても、確定申告の手間、売却までの不安、2重ローンの不安を考えると、5%でもリスク高しとの印象かな。
⑪ 相場より5%安く購入し、5%高く売却できた場合の考察
中古物件:相場価格6000万円 土地建物の比率は半々
a のらえもんさん、購入金額:5700万円
b のらえもんさん、売却金額:6300万円+公租公課清算金【6万円とする】
c リフォーム費用50万円
d のらえもんさん、経費になる取得費用:
仲介手数料+所有権移転登記費用+契約書印紙+取得税+公租公課清算金
191万円+25万円+3万円+0万円+6万円 = 225万円
e のらえもんさん、経費にならない取得時~売却までに支払った費用:
管理費等+公租公課+火災保険料+ローン事務手数料+印紙代+抵当権設定登記費用
+保証料込み変動元利均等返済ローン金利1年分
40万円+12万円+1万円+5万円+2万円+9万円+28万円 = 97万円
f 減価償却費
建物1年分 → 2925万円×0.9×0.031×1年= 795,150円
リフォーム分→ 50万円××0.9×0.031×1年= 13,950円
便宜併せて81万円とみなします
g のらえもんさん、経費になる譲渡費用:
仲介手数料+契約書印紙
210万円+3万円 = 213万円
h のらえもんさん、経費にならない譲渡費用:
抵当権抹消登記費用
2万円
i 譲渡金額-(購入金額+リフォーム費用+購入費-減価償却費)-譲渡費
6306万円-(5700万円+50万円+225万円-81万円)-213万円 = +199万円
※ ただし譲渡益課税39.63%、約79万円がかかります。
これでようやく、120万円の純利益。空中族、よほど上げ相場で且つ運に恵まれないと普通は無理。 → 往復の仲介手数料&登記費用が一般人には堪えます【仲介手数料の減免、直接移転登記手法による登記費用・取得税・公租公課・管理費等の免除手法が使えるプロとは勝負になりません。】