ケーススタディ集

某番組の取材に協力しました。

公開しているメールアドレスに某局某報道番組の取材依頼が来ていました。私の元に取材依頼はいろいろと来るのですが、「湾岸全体にとって利益があるか」もしくは「私にとって時間を取るだけの価値があるかどうか」を判断基準に取材の可否を決めています。

今回は事情が少々複雑で、「湾岸地区を取り上げるための下調べ」ということでした。普通こうしたものは実際に取り上げられるまでは黙っておくべきものですが、今回は番組そのものではなく、あくまでも下調べということなのでお答えした内容はブログで公開しても問題ないと判断しました。

rivercity21
画像出典:パークシティ中央湊 ザ タワーコンセプトムービーより

Q:
(中略)のらえもんさんのブログを拝見し、タワーマンションに住まれる方々のメンタリティにお詳しいのではと考え、ご連絡いたしました。

お伺いしたいことは

  • 湾岸のタワーマンションのマンション価格は今後どうなると見てらっしゃるか
  • 「空中移動族」と呼ばれる人々は本当に実在するのか
  • 実在するとすると、それはどういった属性の方々なのか

等のことです(中略)

A:
こんばんは、のらえもんです。以下質問にお答えします。

1:湾岸のタワーマンションのマンション価格は今後どうなると見ているか

いま、湾岸の相場は昨年夏までに過熱していた価格が、いったん小康状態に落ち着いていると表現できますが、私はこの先また盛り上がると考えています。
というのも、マンション価格はある程度、新築マンションデベロッパーが主導して形作るものです。そして土地原価・建物原価を積算していくと、いまよりだいぶ安かった10年前の価格を付けて販売していては、赤字で潰れてしまいます。そのような背水の陣のような収支計算の超大規模タワーマンションが勝どき・晴海・豊洲・有明にこれから続々と建設予定となっています。
このため、御用マスコミを巻き込みつつ、東京オリンピックと絡めた湾岸エリアの宣伝を更にして、盛り上げるでしょう。また新市場開設や選手村建設などに伴うインフラ整備もこれと並行してどんどん進み利便性も実際あがります。新しく建設されるマンションから住み替えの売却も出てくる周辺の築浅マンション含めて、湾岸タワーマンション第4ラウンド(〜2005港南、〜2008豊洲、〜2014東京オリンピック決定前後)ともいうべき、たいへんな活況を呈するでしょう。

湾岸部のタワーマンション建設は将来の東京一極集中という社会的移動の受け皿と、狭小エリアに住職遊医をパッケージとして用意し、移動を極小化させる将来を見据えた国策ともいえます。縦に都市を伸ばして人を住まわすことができば、面的インフラを整備するコストより安くなるからです。東京都も用途制限や容積率を段階的に緩和しながら積極推進しています。
東京のウォーターフロントは、日本では数少ないフロンティアなのです。そしてこのフロンティアの繁栄にある根っこの部分、人口を吸引されるところは、これまで戸建エリアで通勤に時間がかかる郊外です。

上記シナリオの確度は高いと考えますが、リーマンショック級の金融クラッシュが起こった時、もしくは日銀の金融緩和政策が放棄された時に破綻します。が、金融クラッシュが起こったとしても、時間が経って回復傾向になればまた湾岸部の開発は再開されるでしょう。

proud_web
画像出典:プラウドタワー東雲キャナルコート旧公式より。現存せず

2:「空中移動族」と呼ばれる人々がいるとすれば、どういった属性の方々なのか

私は空中移動族という言葉を使ったことがありませんが、タワーマンションを住み替える人々という意味に捉えるなら実在します。2パターンいます。

1つめは、価格形成の歪みに注目して、いまだ評価の高くない地域の割安なマンションを買い、評価が高くなったところで売却or買増しして次の地域に向かうパターンです。
この人たちは、独身かもしくは子供がいない夫婦です。年収層は幅広く、典型的な例でいえば、「広告代理店・大手マスコミ・IT企業」で特に共働きの人たちが該当します。
住まいに地歴などを考えず、とにかく利便性を重視する視点と、自分の好きな時に好きなタイミングで移動することができる自由さと、与信能力(これが最も重要)を兼ね備えています。
典型的な事例をあげれば、郊外・地方出身者同士の結婚で、どちらも旧帝や早慶など比較的高い学歴を持った人です。もともと東京に住んでおらず「隅田川の向こうだから」とか「埋立地でしょ?」など住まいに余計な偏見を持たないので、こうしたことが可能になります。
2005~の湾岸初期のころは、品川や港南、芝浦に住んでいて、2008~は豊洲や勝どきが主戦場になっていますね。特に、サラリーマンかつ日系企業の高収入業種(つまり、先ほど述べたように広告代理店・大手マスコミが典型的な例です。もちろん御社も入ります)は銀行の与信が付きやすいので、とても有利な状況にあります。

住宅を投資として見ると、負債戦略が大事になってきますが、住宅ローンという商品は用途が限られているとはいえ、これだけ個人が長期で低金利で銀行から資金を調達できるものは他に例がありません。いまだ評価が高くないところを購入し、しばらく住んで周辺が便利になると金額を載せて売却する、それは先行開拓者としての権利金のようなものです。

2つめは地域に根差しながらも林立するタワーマンションを賃貸・購入関係なく自由に動くパターンです。どちらかといえばエスタブリッシュメント層でかなりお金に余裕のある人たちです。
この人たちはブランドが確立された月島~佃界隈のあたりに住みます。
特に、中央区内陸部でも佃だけは別格扱いされています。あそこなら川向うでも住める、そういう人たちが移動するのです。豊洲より総額が張る地域ですので、サラリーマンはなかなか厳しいです。博士・弁護士・公認会計士など士業の人たち、もしくは会社経営者などです。
サラリーマン層でこれができるのはトップオブトップ、0.1%くらいでしょう。

元祖移動族は竹中平蔵と田原総一郎両氏です。どちらも佃に住んでますよ。

———-

人口減少が進む中、地方出身者同士の結婚でかつ女性の正規雇用労働参加率を上げつつ子育てまでするには、ジジババを近所に呼ぶか住職超近接しか選択肢がありません。湾岸は意識高い属が消耗しながら高収入を維持して、東京に住み続ける社会実験場でもあります。

雑誌やテレビの報道、ほとんどすべてが外からの偏見と嫉妬の視線に基づいてます。地に足がついた自然な姿ではない、あれは成金タワー、伝統的コミュニティがない、将来の問題の種であるといった内容です。住んでみるとむしろそういった意見が伝統的(というよりも昭和的)な価値観に基づいた偏見と批判です。
しばらく前まで、湾岸タワーのお値段は、給与所得者が購入できる設定でした。地域差もありますが、実際に給与所得者が過半を占めています。彼らは購入したマンション以上の資産を持たず、共働きで社会に貢献しながら必死にローンと教育費を払う庶民です。
浅い理解に基づいて湾岸民へのヘイトを煽るような番組にだけはして欲しくない、そう考えております。

 

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コメント

  • コメント (1)

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    • dasadasa23
    • 2016年 3月 21日

    後悔しても問題ない->公開しても問題ない
    上記シナリオの角度->上記シナリオの確度

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