HUFFPOSTさんにこんな記事が上がってました。
「普通の生活」東京の子育て世帯でいくら?⇒30代で月54万必要です。(労組団体試算)
練馬区に住む夫婦と子ども2人の4人家族の場合。「若年世代にとって家族を持つことはステイタスになってしまっている」
東京で夫婦と子ども2人の4人家族で「普通の生活」をするには、30代で月額約54万円、40代で月額約62万円、50代で月額約80万円が必要ーー。東京都内にある産業別労働組合などが加盟する連合組織、東京地方労働組合評議会(東京地評)と東京春闘共闘会議がこうした試算を発表した。
へーへーへー。東京で「普通の生活をする※」には、平均よりずいぶんと高い給与が必要になるんですね。まぁ地価も物価も高い東京なら当たり前といえば当たり前、労組が出すシミュレーションですからこの結果から賃上げを勝ち取ろうというものなので、バイアスもかかっているとみるべきです。
※労組側の試算では普通の生活ではなくて、まず「最低生計費試算調査をしたうえであるべき普通の生活を実現するには~」と書いてあるので若干混乱する。
給与額からの差し引き計算ではなく、必要とするコストの積み上げで年収額を積算しているので、現実とはちょっと違うと思うんですよね。もし全部鵜呑みにしてしまうの怖いので、のらえもんも労組団体の試算を読んでちょいと気になったところを書きたいと思います。
まず引用元の東京春闘共闘会議・東京地方労働組合評議会のpdfを見るとこんな感じです。
この表が言いたいのは、練馬区に在住しながら子ども2人を育てるには、30代で648万、40代で744万、50代では964万必要とのことです。あ、こちらは額面の世帯年収ということですね。特に50代は私立大学に子どもを通わせているので、まぁこれくらいは必要でしょうね。
でも・・・この表を一読しただけでもいろいろツッコミたい点が。いやまず4人暮らしで42.5平米はやめない?50代で大学生高校生の子どもいて50平米もやめない???労組の人たちこれで暮らしているの?と思ったら、文献読むとこの値にはちゃんと基準があるようでした。失礼しました。
国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」(2011 年 3 月 15 日閣議決定、計画期間は 2010 年度から 2020 年度)による「最低居住面積水準」にもとづき、「30 代夫婦と未婚子 2 人世帯モデル」42.5 ㎡、「40 代夫婦と未婚子 2 人世帯モデル」47.5 ㎡、「50 代夫婦と未婚子 2 人世帯モデル」50 ㎡とした。
試算の住宅基準が狭すぎると思ったら、お国が決めた最低居住面積水準に合わせているとか。
その年収ならもっと広くて良い住居は住宅ローンを組めば可能
この資料、設定がカツカツなのか余裕あるのかよくわからないアホの子すぎるんですよね。私、べつに生活コスト削減アドバイザー系のFPでもないのですが、普通の生活という割にはバッファーがありすぎて…もしこの家族が私のところに相談に来たらですが:
- 通信費月2万円はやめとけ(スマホ料金に無頓着です、来年3月に始まるドコモのahamoに乗り換えましょう、僕も乗り換えます)
- 生活カツカツのはずなのに毎日コンビニ弁当食べて食費月11.2万円(カネのない時はお父さんは晩飯朝飯の残りを弁当に詰めて水筒を持ちましょう。新婚数年間は私もそうしていました)
- 電化製品すべて6年おきに買い替える(もっともつよね、カツカツならメルカリやヤフオクも活用しよう)
- 旦那が正規従業員を続けるも奥さんは扶養の範囲内を堅持とか
まぁこういうの全部突き詰めて生活コストを切り詰めたらもっと年収が下でもイケるとは思うのですが、あくまでも「東京で普通の生活」ですものね、年収500万円ですと、親が近くにいるとかでないと、練馬区では固定費の家賃が重くて生活できるかギリギリの気がします。
しかしこのシミュレーション年収なら旦那さんは正社員のようですから、住宅借りるより買っちゃった方が良い気がします。切り詰めたコストは貯金や教育に回すなり、夫婦共通の趣味に使えば試算よりはもう少しマシな生活できると思います。
あと、30代4人家族で住居費に10万円出せるなら、ギリ新耐震なリノベマンションを3000万円前後(35年0.7%で月8万円ボーナスなしが3000万円+維持費2万)で探すか、練馬区でちょっと古めの戸建てを3500万以内で買って、DIYで直していくとかいろいろやりようはあると思うんですよ。自身の経験から語りますけど、良い住環境はQOLを爆上げしますから。ご自身が正社員という”身分”をお持ちだったら早く家を買った方がいい。
だから、結論。
「30代子持ちが東京で”普通の暮らし”をするのには、たしかに年収648万くらいは最低欲しいけど、狭い賃貸で我慢せずにまずは中古でいいから家を買おう」
それでも生活費がカツカツなら住む場所を換えた方が良い
命題が「東京で普通の暮らしをするなら」でありますからで、この考え方はまずいかもしれませんが、旦那の給料で東京23区でやっていけないと感じ、奥様が不要の範囲内でしか働かないor働けないのであれば、やはり東京を出た方が生活コストが当然下がりますよね。
通勤利便性と生活コストを両てんびんにかけるなら、東京の北西側方向、つまり埼玉と千葉が相対的にコスパ高くなります。勤務先が新宿なら中央線や京王線などの東京市部もあり得ます。神奈川は下手すると東京北部よりも高いのでこの際検討から省きましょう。
ぱっと思いつくのは埼玉県だと川口駅周辺、千葉だと馬橋・新松戸・北小金あたりの千代田線直通沿線でしょうか。もちろん住宅価格は明確に川口>松戸ですので、この辺は生活スタイルに合わせて選ぶことができるはずです。練馬区だったら住宅購入予算3000万円は相当きついキャップですが、川口駅周辺なら探せば見つかるし、松戸ならもう少し下げても大丈夫。
賃上げ活動自体には賛成します
労働組合様の本職は平和活動や護憲運動ではなく、労働者の賃上げを果たすこと。
その目的に合致するのであれば、今回このような資料を作って「これっぽっちの給料じゃ東京に住めない、もっと賃上げすべき」と活動するのは非常に良いことですし、私も賛成します。(HUFFPOSTの書き方には好感を持てないけど)ただ、日本の労働分配率は世界から見ても下の方ではないということも留意すべきです。しかし、経営側にも社会保険の負担が爆増していて、20年前の額面年収650万円といまの650万円はだいぶ違うということ、認識してほしいですよね。
さて、奥さんパート込みで世帯年収600万円台の方って東京ではかなり多いと思うのですが、正社員共働き世帯ではなく、奥さん側に103万円キャップがかかったままだとすると、世帯年収はこれから思ったように伸びづらいので、ここから都内の新築マンション3LDKを狙うにはちょっと心もとないはずです。予算が限られている中では、あまりリセールを考えずに、無理のない範囲で家族が極端に我慢せずに済む大きさの家を買って、家族全体のQOLを向上させていくことが重要なのではないかなと私は考えます。
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