某経済誌に「のらえもんさんが最近の新築マンションを見て思う感想をお聞かせください」と取材依頼を受けました。結局、話はどちらかといえば晴海の選手村の話となり、共用廊下に見るコストダウンの話はたぶんボツになると思いますので、こちらで触れておきます※。
結論から言えば、良いマンションというのは、共用廊下を歩くと凹凸が多く、逆に良くないマンションとは、廊下に凹凸が無くて玄関扉がまったく引っ込んでない(アルコーヴ無し)物件となります。
元々、「マンション」という単語は邸宅という意味となります。マンションがその立地要件により集合住宅とするにあたり、少しでも邸宅感を出そうと、昔は廊下と玄関の間には門扉を置き、その向こうに玄関扉を置いたのでした。これは、プライバシーの問題と邸宅感の演出には必要なものでした。
これを廊下側の壁を赤くなぞっていくとこんな感じになります。
当然、こうした凸凹を作るのはコストがかかります。ただ、他人が歩く廊下側から少しでもプライベートを守るための措置でした。
時代が下ると、ポーチ付きの住戸は姿を消し、共用廊下の壁の細かい凹凸は無くなっていきます。今売っているマンションはほとんど凹凸が無くなります。アルコーヴも消滅しているマンションが多くなっています。湾岸物件で無く、事例にあげてしまって申し訳ないのですが、下の図面は世田谷区で定借坪300万円オーバーで今売られているマンションですね。
拡大しなくてもわかると思うのですが、一切凹みはなく、共用廊下を歩く人と玄関を開けた人がぶつからないように、最低限の壁があるだけです(最近はこれすら無いマンションも多いです)。当然高級感が出るはずもなく・・・
土地代も建物建設費も高くなり、一方で買い手が買える想定予算の上限がある以上「そりゃ手間ひまかけて建物を作りたいけどその余裕がない」というのが売り手側の論理かと思います。住戸の平均専有面積を削り(坪単価が高くなっても面積を削れば総額は変わりません)、内装の仕様を下げ(最近見はじめた人にはわかりません)、最終的には廊下側からのプライバシーまで考える余裕(どうせ住むまではその重要性が買い手にわかりません)がなくなってきました。
そういうマンションを見ると、最新の設備がどうこうといわれても、「つまらない」と感じてしまうんですね。スマホは毎年進化しますが、マンションは極めてローテクなものですから、10年前と今で決定的に性能が変わるものではなく、ごく一部のマンションを除いて構造的には退化しています。これは2016年くらいから顕著になってきました。私はマンションを見始めた最初の頃のピュアな気持ち(笑)は既に無く、マンションは箱を買うもの中身はいじれば変わる、と斜めに構えてしまっていますので、なかなかいま新築マンションの多くについてポジティブに見られないのが正直なところです。
※選手村が分譲開始されるとき、需給バランスが崩壊して湾岸物件が暴落するのではないか、というお話ですね。私の結論としては・・・某経済誌の特集を待ちましょうか。
この記事へのコメントはありません。