油圧機器メーカーKYBと子会社のカヤバシステムマシナリーによる免震・制震ダンパーの検査データ改ざんで、マンション業界も揺れています。
KYB
免震データ改ざん 不正装置設置、全国986物件 東海123物件
毎日新聞 2018年10月17日国交省は同日、KYBと子会社のカヤバシステムマシナリー(KSM)に対し、問題の装置の交換計画や再発防止策を報告するよう指示した。また、国交省は、免震装置メーカー88社を対象に検査データの改ざんの有無を調査するよう求め、年内に報告させる方針。
KYBによると、2003年1月以降、出荷時の全数検査で、国交省の基準や顧客が指定した基準を満たさない装置の検査データを改ざんしていた。検査記録や聞き取り調査から少なくとも8人の検査員が関与していたという。
改ざんは00年以降、続いていた疑いがあるが、03年1月以前の検査記録は残っていないという。こうした不正の有無が明確でないものも合わせると、不正な装置が設置されたのは免震用が903物件、制振用が83物件に上る。都道府県別では東京都が免震222、制振28▽大阪府が免震98、制振9--など。同社は不正の有無が明確でないものも含めて交換に応じる方針。
このブログは「マンション購入を真剣に考えるブログ」なので、マンション特に免震タワーマンションに関して本件への影響を手短に書こうと思っております(制震ダンパーはマンションにあまり導入されていないので)。
そもそも、免震ダンパーとはなんでしょうか?免震装置とは、建物と地上を積層ゴムで挟み、地震エネルギーを建物本体に伝えにくくする装置です。その積層ゴムの横に油圧ダンパーを配置して、揺れを吸収する装置となります。これが免震ダンパーの約目です。
免震ダンパーは固すぎても、やわらかすぎてもだめで、基準値は国土交通省が基準を決めています。プラマイ15%まで許容される計算でしたが、KYBは独自基準を設けてこれをプラマイ10%までですよと約束して出荷していました。しかし、性能検査記録データは一部において書き換えられていました。
では、この減衰性能の書き換えで、免震タワーマンションの耐震性能は損なわれているのでしょうか?KYBの説明によれば、計算の結果基本的には大丈夫だということが発表されています。つまり、KYB独自基準もしくは国土交通大臣認定の性能に達していないものがあるものの、建物全体としては安全であるということのようです。以下はKYBの資料です。もちろん、KYBのしたことは許されることではありません。
しかし、性能が改ざんされている免震ダンパーをそのまま使うことはできませんから、交換対応となります。そのままにしても、ただちに影響はない(なぜなら免震ゴムと違って荷重がかかっている場所ではない)けど、なるはやで交換を実施していくことになります。しかし、KYBの生産限界があり、月産500本となるので、交換完了は20年9月となる見込みです。代替品となる川金HDでも改ざんが発覚し、代替品どころではなくなってしまいました。
免震改ざん、まん延の恐れ=納期優先で不正、川金も
10/24(水) 9:00配信 時事通信
地震による建物の揺れを抑える免震・制振用オイルダンパーのトップメーカー、KYBが性能データの改ざんを公表してからわずか1週間。今度は2005年に同様の装置の出荷を始めた後発の川金ホールディングスで不正が発覚した。国土交通省はオイルダンパーメーカー88社に対し年内を期限に報告を求めているが、急きょ報告の一部を前倒しし、社内調査の結果を週内に提出するよう要請。業界内に不正がまん延している実態が明るみに出る恐れは拭えない。
現時点では、以下4つのことがいえます。
1:一部の免震新築タワー物件は販売停止状態となりました。名前は挙げませんが、湾岸でもいくつか事例があるようです。マンション掲示板等によると、既契約者や管理組合には通知がきているようです。販売再開は、少なくともKYBが免震ダンパーを交換できる見込みがつくまではされないでしょう。
2:本事象に対しては、売主が責任を持って対処すべきものです。改ざん対象物件にお住まいもしくは購入契約済みの方は、KYBに文句を言ってもしょうがありません。対処は売主が責任を持って行い、その後KYBとの交渉は売主がするべきものです。
3:とりあえず、そのままでも免震構造全体に与える影響は思いのほか少ない模様です。いま、直ちに変えないと耐震性が不足する、そういう事態ではなさそうです。ただし、新築既契約者の立場で、まだ引き渡しを受けていない物件については、交換が完了するまで引き渡しはされないと考えます。そうなると、引っ越しのため売却が済んでいる人は?売主と交渉するフェーズかと思います。
4:新規の免震タワーマンション物件がしばらく作れないかもしれません。これから建てる新築免震物件は代替品を入れるかもしれませんが・・・免震ダンパーを設置しない設計変更にすることも可能ですが、手続きなどからするとなかなか難しいでしょう。
消費者イメージや建物の耐震性に与える影響としては、耐震偽装>=杭打ち偽装>免震ゴム性能改ざん>>>免震ダンパー性能改ざんくらいだと考えます。ただ、そもそも改ざんが蔓延している現状については、大いに憂うべき事態です。日本全体を覆うの”余裕の無さ”が、今回の偽装の背景にあると識者の指摘もあります。
>制震ダンパーはマンションにあまり導入されていないので
飯田橋の方の某制震マンションでは、何年か前に
オイルダンパーの制震と広告されて分譲されましたよ。
どこのメーカー製ダンパーなのかは知りませんけど。