インターネットの極北の地である、東京Deep案内をご存知でしょうか?街のポジティブ面ではなくネガティブ面に光を当て、独特の文体で抉り出すサイトです。紫と黒というネットのアングラサイト文法にのっとったデザインはもとより、エントリ自体も”ねっとりじっとり”とした読後感はありますが、何故か不快にならずむしろ次の記事も読みたくなるようなクセがあります。同じネットの物書きとして尊敬しております。
その東京Deep案内さんが書籍化ですと!?これは即買いですよ。でも、お声かけした出版社って相当勇気ありますね。
それで、数日かけて読破したのですが・・・あのどキツイ表現はまったくマイルドにならずネットのノリそのままを奇跡的に維持!1都3県の首都圏通勤圏を完全に網羅した超々完成度の高い(ネガティブ)タウンガイドになっていました。類書としては「東京のどこに住むのが幸せか」「東京で家を買うなら」「東京どこに住む? 住所格差と人生格差」あたりだと思いますし、私はこれらの類書を全部読んでいますが、断言します。
これらの類書をすべて足し合わせてもなお、10倍の価値がある!
、と。
網羅性と専門性、そして面白さは普通、鼎立し得ないものですが、本書はすべてにエッジが立っていて見事なものです。単行本は税込み¥2,376と若干躊躇する値段になっていますが、買ってみれば納得するボリュームです。そして情報の密度もさることながら、著者逢阪まさよし氏の脳髄からひり出される表現の数々がいちいち笑いを誘います。「貧民御用達」「ブルーカラー&アウトロー臭」「○○クオリティ」「マッドシティ」「川崎国ISIS事件現場」「殺伐タウン○潮」「土着ヤンキー」「客層が急激にアッパー系からダウナー系に変わる」「純粋培養された超絶地元思考のヤンキー」「底辺街道」「ネズミー脳」「金だけならやたら持っている成り上がりの田舎物」「それなりにハッテンしている」「極左プロ市民が蔓延っている」「東京鬼門ゾーン」「埼玉県民による沿線文化蹂躙」・・・ってこれ本書の1/3も行ってないですからね。本書すべてがこのノリです。
首都圏絶対住みたくない街コレクションは22位まで公開されていて、私はリアルにここにのっている3つの街+ランキング外1に住んだことがあります。逢阪まさよしさんは大阪出身らしいのですが、よくそこまで知ってますねということが結構載ってて、表現に針小棒大な面はあるものの私が知っている街の情報部分は全部事実です※。
この住みたくない街コレクションも、たぶん普通の尺度から見る「犯罪率」「教育環境」などのガチでやっているだけでなく「勘違い度」という要素をひとつ入れることにより、単価が高めの新興住宅街を変化球的に入れることに成功してるんだなぁと思う次第です。
他にも「八王子の創価大学の学園祭に行ってきた」「小平の朝鮮大学校の学園祭に行ってきた」とか普通の本では読めませんから、それだけでも価値がありますね。
たまに豊洲をはじめ湾岸の街々を嘲笑うかのような記事には反応してしまいますが、本書はもっとイジられているにも関わらずまったく腹が立ちません。これは稀有な資質だと思うのですが、本書が一貫して持っている視線が他沿線と比べても公平、というか全部ネガティブだからなのでしょうね。
本書を貫く視点としては、地方から上京してきた20代男性の一人暮らし街選びガイド、となるのでしょうか。書いているご本人は間違いなくおっさんだろうけど。とりあえず値段以上の満足感と異常なボリュームとテンションがある怪書、メチャクチャ面白いです買いましょう。のらみちゃんに「あなたが声を上げて笑いながら本を読んでるってはじめてみた」と言われましたよ。
※本書の帯で書かれている豊洲タワマンのチャイナタウン化だけは、きちんと数字の比率で見せてもらわないと納得できないけど、大勢の中国人が住んでいることは事実です。
昔は宝島のこの町に住めという今では信じられない面白い本がありました。
ここからきれいになることを考えると、八潮は買いですかね?