日本人はよっぽどのことがない限り、引越しをしません。日本人の生涯移動回数代表値は国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、男性4.5回・女性4回とのこと(ただし、この代表値の信頼性は低いとの報告有)。どちらかといえば、住む場所は生まれた&育ったところを中心に考え、進学や就職を機にはじめて引っ越す人が多そうです。ただ、家業があるとか地元で進学&就職するとなると地域内での移動が中心となるでしょうね。
東京という都市は日本全国から人口をかき集めていますが、東京に地縁が無い人にとって、住む場所は結構選び放題なところがあります。本書は類書のような「人気の街探し」というよりも、住職近接トレンドを肯定して、もっと自由に選べば東京の東側もいいよね、という本となります。。。きちんと読むとこの紹介はちょっと苦しいですね、この本が少し紹介しづらいのは、「東京どこに住む?」というタイトルを正面から考えているのは第一章と二章だけ(三章は東京脱出した人の話もある)であとは、別の話題だからです。
【目次】
第1章 東京の住むところは西側郊外から中心部へ
第2章 食と住が近接している
第3章 東京住民のそれぞれの引っ越し理由
第4章 なぜ東京一極集中は進むのか
【4-1】東京内一極集中という現象
【4-2】人口集中と規制緩和
【4-3】景気上昇と人口集中
第5章 人はなぜ都市に住むのか
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筆者は、東京の中心を皇居から5km圏内と定めます。そうすると池袋・品川は圏外、新宿と渋谷は端っこ。文京区・台東区・中央区・墨田区の一部・江東区の一部などは余裕で入ってしまいます。たしかに門前仲町や清澄白川といったところから、日本橋や大手町といったビジネス街に行こうとすると驚くほど近いというのがわかりますね。
ただ、帯で書いているような「かつては西高東低、今は逆!」という結論は無く、東側も住む場所として魅力が上がってきたよ、という紹介にとどまっています。
一読した感想は、「う~ん、全体的になんとなくまとまりが無いかな」と「もう少し話に、生活の密着感が欲しいなぁ」というところでした。これは筆者が都市計画の専門家やデベロッパーなどではなく、取材して記事を起こすライター出身だからでしょう。お値段分の価値はありますが、都心湾岸丸先生のようなデータから縁端的に導き出すようなアプローチは取られておらず、本書の主張はあくまでも他資料の出典によるものが多いからです。
それなら再三本書でも触れられている、こちらの本を読むのが先かな、と思います。
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私は郊外に生まれ育ちましたが、同じ小中の友人たちのマイルドヤンキー的な感覚がどうしても馴染めず、早く東京に出たい一心だったのを思い出しました。こうして私は、東京の中で自由に住む場所を選べる精神的自由はあったわけですが、引越しを繰り返した結果、新住民が多数住む東京湾岸に流れ着いたというのも運命を感じます。
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