いま、ニュースやワイドショーでは「パークシティLaLa横浜」の施工不良問題でもちきりです。のらえもん、この問題の第一報の時、表に出てたマンションの条件で、すぐに該当マンションがわかりましたが、表立って名前を書くのは控えていました。というのも、この問題は、あまりにも大きすぎて住民の皆様のこれからのご心労を考えると軽々しく触れるべきではないと考えていたからです。
実は、昨年では似たような問題で騒がれた住友売主・熊谷組施工の「パークスクエア三ツ沢公園」というマンションもありました。両者に共通するのは
- 基礎杭の一部が支持地盤まで届いていなかった
- マンションの敷地内で急に地盤面が傾斜した個所があった
- マンションが不同沈下を起こし、棟間でズレが発生して問題が発覚した
- 売主側は当初は「東日本大震災の影響」と説明し、最終的に瑕疵を認めた
- 売主は最大限の責任として最悪無償建替えを住民側に提示している
- 建替えをするかどうかは住民が決めることになる
ということです。パークシティLaLa横浜の事例は、杭打ちを担当したのが旭化成建材の現場担当者がデータを紛失したり、偽造したことになっています。厳しいコストと工期管理の中、当初想定以上の深い杭打ちは必然的にコスト上昇と工期延長を招くため、板挟みになり、こうしたことが現場レベルで起きてしまったのではないかと推測します。もちろん、データの偽造は発覚時に数千倍のコスト増で跳ね返ってくることですから、許されることではありません。
(杭打ちする機械の先端には地盤の固さを測れる機器が付いているはずです。急峻に地盤面が深い場所になっているも”地盤面に到達するまで”施工すればよかったはず。これを怠った。)
不謹慎な言い方かもしれませんが、パークシティLaLa横浜の方は、棟間をエキスパンションジョイントで繋いでなかったら、問題は発覚していなかったかもしれません。56mで2cmのズレですから。
「パークシティLaLa横浜」
画像出典:住適空間マンションWikiより
「パークスクエア三ツ沢公園」
画像出典:日本経済新聞記事「横浜・三ツ沢の傾斜マンション、応急工事へ協議」より
この問題について、
管理組合理事会運営に立脚した視点から、はるぶーさん:
横浜のマンションの施工不良問題に関して
これから購入を検討している方に立脚した視点から、マンションマニアさん:
パークシティLaLa横浜の施工不良について考える 今後三井不動産のマンションは売れるのか?
お二方が素晴らしい見解を出されていますので、のらえもんとしてはお二人の視点からは追加することがありません。そこで少し視点を変えて、「既に購入して入居しているウチにも杭不良があるのでは、と不安に思ってる区分所有者」の立場からこの問題と、今後の影響について考えてみたいと思います。
残念ですが、この事例は、日本のマンションにおいて「この2棟のみ」しかないとは思えません。きっとどこかに杭基礎部分に施工不良があるマンションは他にもあるでしょう。その上で述べるとすれば、
1:旭化成建材は全国でおよそ3000棟の施工実績がありこのリストを精査して公開するとのことだが、該当マンションかどうかの公表はそれぞれのマンションの判断に任すべき
マンションの売主はすべてに対して完全な保証ができるのでしょうか?しかるべき保証の筋道が確定しないなら、私が該当の管理組合理事長なら、通知が来ても絶対に表に出しません。同様に性能を偽造した東洋ゴム製免震ゴムを使った建物は現在公開されていないからです(ただしこれらのマンションについては、重要事項説明扱いになり現在中古マーケットで取引がほとんどできていません)。施工が行われたすべての現場で施工不良が起きているわけではありませんし、すべてボーリング調査をすることは不可能だからです。疑わしい部分があっても、「地上部分に著しい影響が表れるまでは」推定無罪を適用せざるをえません。
2:マンションではめったに起こらない不同沈下について、問題となるレベルの社会的コンセンサスを至急取るべき
戸建てで2cmの傾斜と大規模マンションでの2cmの傾斜では、影響度がずいぶん違います。
構造計算の上、耐震性に問題が無いという前提ですが、非常事態におけるトリアージのように「何年間でどこまでのレベルなら救うべきか」どうかの社会的コンセンサスを作るべきだと考えます。同時に、マンションに不同沈下が起こってないかの外部からチェックをできる企業がこれから流行るかもしれません・・・(これはこれでパンドラの箱を空けてしまうかもしれませんね)
3:こうなってしまった以上、該当マンションの住民の負担は多大だが、建て替えもしくは買戻しを飲むべき
建替えには4/5決議が必要ですが、住民間の合意形成を考えると茨の道であるとの報道がされています。それを承知で申し上げると、「建替え」に賛成するか、そうでなければ「売主の買戻し」を飲むべきです。なかなか合意形成ができないとみるなら、買戻しがベターでしょう。合意形成できずに補修したとしても、住民間の対立が酷くなるばかりでしょうし、資産価値としては暴落したままだからです。数千万円をかけてミソが付いた物件を買おうとする勇者はいないからです。
P.S.
今回のエントリは自分の中でも意見が固まってません。いきなり変更してしまうかもしれません。また、売主が三井だから保障できる、というのはちょっとだけ違っていて、売主が瑕疵責任を果たすほどの資力を持たなかったり、倒産してしまっても、住宅瑕疵担保履行法により保証されるはずです。もちろん、売主は倒産を全力で回避しますから、なかなか責任を認めようとはしないでしょう。住民は何の罪もないのにストレスだけが増えていくので、瑕疵担保責任のことを感がれば売主の経営基盤が盤石であるのは重要な要素かもしれません。
既存の公立学校建物では相対沈下量が2/1000以下なら問題無しなので、今回の1/1000の指摘対し調査したのは資料不備を補うための確認目的だったと推察します。
港南区総合庁舎の移転新築工事での杭施工状況調査などの様に施工不良が指摘される例は稀なので、本当にビックリしました。
三井不動産は調査から補償まで、最大限の対応をしていると思います。