前回エントリでも述べたように間取りは建物形状によって左右されます。実は前回の間取り図は、外廊下板状(田の字)と内廊下タワー(南面3室)の典型的な間取りでした。
板状マンションは、片側に廊下が並び、反対側にベランダが並ぶ形式で、ちょうどチョコレートの板のような形状です。一目でわかる通りとても経済効率の良い形状です。日本人好みの南向きにベランダ側を配置します。反対の北向きは外廊下のため、通風兼採光の窓が取れます。必然的に北向きの部屋と南向きの部屋ができて、田の字の間取りができあがります。
板状マンションのしくみ
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このしくみをもう少しだけ詳しく解説したのが上図です。専有部の奥行きを11.5mと仮に固定した場合、スパン幅の変化によって販売専有部面積を変化させます。71平米タイプの場合は、スパン幅が71/11.5=6.2mとなり、100平米タイプだと100/11.5=8.7mとなります。*注
敷地形状の問題で、奥行きを薄くする場合や、一軒あたりの平均専有面積を広くとるため田の字が合理的でない場合は、必然的にスパン幅が長く取られる構造になります。
では、内廊下タワーマンションの場合はどうでしょうか。
内廊下タワーマンションの一例:ザパークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス
内廊下タワーマンションは必然的に、専有部の奥行きが薄くなります、つまり板状マンションと比べるとスパン幅は広がる傾向にあります。これは内側面に窓を作れないため、部屋の配置に制限が出てしまうからです。また東西南北4方向に外側=ベランダ面を作れるため、スパン幅に余裕がある場合が多いです。
同じく内廊下タワーマンションの一例:ブリリア有明シティータワー:
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前回上げた間取りをもう一度見てみましょう。玄関側の壁には部屋がありません。実は窓がない部屋=行燈部屋は原則「部屋」とは表記できないため、デベロッパーはなるべくベランダ側に部屋を集めます。
あれ?では洋室(3)は部屋と表記できないのでは?という疑問が生じますね。この部屋表記の制限には抜け道があって、リビングと引き戸で繋がっていて、かつ換気ができる場合(本当はもっと条件が複雑なのですが・建築基準法第28条)は窓がなくても「部屋」と表記ができます。基準を満たさない場合はDENや納戸やサービスルームといった表現になります。
2LDK+サービスルームより3LDKの方が売れるので、タワーマンションで窓のない部屋を作る場合なるべくリビングと引き戸で繋げます。引き戸は空間効率がいいですし結果的に廊下が少なくなりますが、プライバシー性が若干弱いのが気になります。
ちなみに窓を二面つくれる角部屋になると70平米台の内廊下マンションでもすべての部屋で窓が作れるので部屋の広さを削っても廊下を作ります。下の間取りは74.23㎡で上と3.34㎡違いますが部屋の畳数はほぼ同じですし収納の広さもほぼ同等です。
センターインについては、次回にしましょう。
*注:専有部の奥行きを10m程度にすれば、板状形態でも70平米でスパン7mとれるじゃない?と思うのですが、特に長谷工さんは、防音と階高のトレードオフになるのでやりません。防音と階高のトレードオフについては語る機会があればそのうち。
のらえもんさま
いつもブログ拝見させていただいております。
私が購入予定のマンションですが、添付のURLの通り、
窓なし、開き戸にも関わらず、5.3畳の部屋が居室表記になっております。
間取り自体は気に入っておりケチをつけるわけではないのですが、
これから住むわけですから事の道理くらいは知っておきたいと思い質問させていただきました。
何か例外的なルールがこの間取りに適用されている可能性がありましたら教えて頂けないでしょうか。
よろしくお願いいたします。
>>かずまさま
建築基準法第28条1項および4項をごらんください。
窓のない部屋であっても、引き戸(ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた。に該当する)で別の居室とつながっていて、その居室と窓のない部屋面積合わせて7分の1以上の採光のための窓や開口部があれば、窓のない部屋も居室と名乗ることができます。