日鉄興和「リビオ」がマンションの新しい販売のスタンダードを作ると鼻息荒くサービスをリリースしました。
サービスの概要とその目的については、このサービスを作った中心人物である和田氏のこのブログを読んでいただくとして、事前に知らされていた7/15の記者会見中継を見た上でのらえもんなりの感想を述べたいと思います。
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そもそも、マンションブロガーのらえもん活動の目的の一つに掲げていたのは、「不動産に関する情報の非対称性を、個人の力で打破する」でした。→ブログの目的と自己紹介ページ
ブログを始めた10年前。当時は、新築分譲マンションの売り方が、今よりもずっと売り手側主導であり、ネットでの情報開示には消極的でした。ほぼ何も知らない状態でマンションのモデルルームに行き、コンセプトムービーと接客をされて、やっと最後に価格表が出てくる…予算の目線が合わなかったらダメだし、無理して押し込んだ挙句、その後家計破綻になったら大変です。そのへんの反発心からこのブログを作ったのです。
そして、マンションブロガーが堂々とネットに価格やら図面やらをばら撒く。あんな右から左に横流しするだけでアクセス数稼ぐなんてマジでレベルが低い。一刻も早く終わらせたいと常々思ってた。
彼独特の書き方だと思いますが、この一節がのらえもんブログを意図しているのであれば間違っていますね。価格表はあくまでも非対称性解消の手段と、デベロッパーの考え方を価格表から追体験や評価するものであって、それがメインコンテンツとは思ってはいません。
ただ、始めた当初の頃は苦々しく思っていたデベさんも多いと聞いてます。デベから頼まれもしないのにマンションブロガーが勝手に価格表を上げるものだから(笑)コロナを良いきっかけとして、自然と売り手側の意識も変わっていったのだと思います。いまは資料請求すればかなりの資料がもらえますし、なんなら価格表もpdfで送ってきますものね。
情報の非対称性が半ばブログネタであったマンションブロガーとしての視点でいうなら、sumuneが画期的なのは「登録しなくても図面やパンフから、管理に関する情報、日影図、周辺施設との離隔図」まですべて公開されていることです。今後は、ブロガー側にも更なる資料の読み解きスキルとか、ライバル物件との比較の方がより求められていくのでしょう。
モデルルームは無くなるのか
これは和田氏も言ってますが、高額価格帯において情報を公開して、商品を陳列するだけで売れるのはテスラくらいのもので、その10倍高いマンションの世界においては97%の人は、情報がいっぱいあるからといって買うことは無いでしょう。ですので、手触りで実物を確認する作業や、数千万円という商品購入の背中を押す機能として、モデルルームという販売装置の寿命はまだ尽きていないと考えます。
sumuneですっ飛ばしたいのは、むしろ購入の意志を固めてから先のお話。オプションを入れて、住宅ローンを確定し、引き渡しまでの一連のプロセスを「お客が望むなら」ネットで完結できる手段を作ったということでしょう。
顧客が購入意思を固めた後のプロセスについては、「付加価値のない作業」と見切ったのでしょうね。だから、メール登録者に諸費用に使える100万ポイントを付けるというバラマキを思い切って実行しているのです。
果たしてネットで買う人はどれだけいるのか
私のヤマカンでしかないのですが、現状は3%程度ではないでしょうか。でもこれからは少しづつ割合が増えていくはずです。特に「不動産を購入したことがなく、他の買い物と同じようにネットですべて意思決定できる若年層」「2軒目、3軒目と買っていくうちにマンションを買うプロセスがかったるくなっている人」「不動産投資家」などです。私も実は2回め以降のモデルルーム訪問はかったるいと思っている人ですし、それが”100万円分のポイント”という餌を吊り下げられれば食いつくと思います。
現状出回っているモデル、広告費をバラまいて集客、モデルルームに来場させて高揚させ、最終的に購入していただく、という現状の一連プロセスはとても良くできていますし、今までそれで回っているのだからいいじゃないか、と思っているところを大胆に自己否定した、というのがすごいなと素直に思います。
でもこれは、日鉄興和さんが販売部門を抱えていないからできたことなんでしょうね。彼らにとっては販社は発注者側なのでコントロールできるのですから。DXは社内の一部もしくは全部を自己否定することから始まるので、販売部門を抱えている会社はなかなか踏み切るのは難しいでしょう。私も職場でどれだけ苦労し、挫折したことか。
これ、テスラがディーラーを使わず、自社で販売完結させているから、意思決定スピードがはやいということと似ていますね。
果たして何がマンデベの付加価値なのか?
このシステムの問うていることは、「マンデベの仕事って結局何が付加価値なの?」ということではないでしょうか。情報を抱えてイメージで集客して、モデルルームで小出しに出していく従来の新築販売というプロセスは、本質的に付加価値があったのだろうか、とも思います。
しかしですね、ちょっとだけ毒を吐くとこれはリビオさんが数多く手掛ける小型物件だからこそよくハマっていると思うのです。かなりの大型物件、それゆえに多様な魅力を付加されている、つまりのらえもんの主戦場であるところだと、スマホという小型画面だけですべてを消化することは不可能ですから、やっぱりハマらないんだろうなとは思います。ただし、モデルルームにいって、買付はこのサイトでその場で出して、その後はネット完結、というのは理にかなっています。
sumuneのあとに付いた「by LIVIO」というのはこれは自社だけで抱え込む販売システムではなく、他社でも横展開できるぞ、という意気込みでしょう。小規模物件ならもしかして他のデベさんも乗ってくるかもしれませんね。それに、販売コストが重くて採算が合わなかった小規模物件が出てくるかもしれません。
今後の中古マンションの売り方はどうする?
会見後の質疑応答を聞いていると記者から「中古にも手を広げるのですか」→担当役員「広げます」と言いきってて「マジかよ簡単にはできないでしょ」と思ったのですが…秘策があるのかもしれません、いやでも本当にできるのかな…
「もっとマンションをみんなが買う世の中にしたい」と和田氏はブログでおっしゃるのですが、セカンダリマーケットでも同じように効率化が進まないと、プライマリマーケットだけを効率化しても、きっとどこかでふんづまってしまう。
ひとつのマンションをたいへん長い期間かけて売ることに定評のあるゴールドクレストさんは、自社の新築ページの中に、棟内中古の売出しも乗っけていて、売り方がもはやマンデベじゃなくてリゾート会員権に近いなと思いました。
もしかして、このサイトとシステムはそのまま末永く取っておいて、中古も似たような形で掲載する、というのは大いにアリではないかと思います。その前にリビオのすべての部屋に拡張するのが先でしょうけどね。
発表を聞きながら、マンションブロガーのらえもんも、単なる”価格表野郎”ではなく、のらえもん視点・読むことで学びと楽しみがあるようなブログにしていく必要がもっとあるな、と考えさせられました!
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