先日このブログで紹介した「狭小邸宅」はめちゃめちゃ読まれました。僕が出した本の関連書籍になるくらいに(笑)。
そして、Twitterで話題になっていたもう一つの小説も読了しましたので本ブログで紹介させていただきます。題して「ニュータウンは黄昏れて」
主人公はこのマンションで育ったアラサー娘と住宅ローンの返済に疲れた母。この二人を中心に物語は進みます。舞台は、築30年以上経ったエレベーター無しのバス便分譲ニュータウンマンション。小説の中には「団地」と表現されていますが、古く狭い市営都営賃貸団地ではなく95平米の部屋で暮らしている描写から、旧住宅・都市整備公団が売主の分譲マンションかと。
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ここで幼少期を過ごした娘と友達2人、それぞれが見つける幸せの形や、そしてローンを返済して早く出ていきたいと強く願いながら団地の再生のために働くことになった母の葛藤が会話主体の描写で綴られます。小説というには、あまりにも描写にリアリティが無く、説明的セリフが多くて閉口するのですが、郊外バス便分譲団地の行く末を論じた点では五つ星級のおすすめです。(鳩山太郎がモデルなのかと思う金持ちドラ息子の描写は面白いのですが・・・)
世の中は、都心方向へシュリンクの真っ最中。
郊外駅で更にバス便立地となりますと、完全車歩分離で駐車場完備、緑地が豊かなニュータウンの利点が見向きもされなくなり、黄昏の時を迎えています。面白いことに、このニュータウンの利点を著者は住み続けながらも早く出ていきたいと願う母ではなく、岡山の田舎から出てきた祖母に語らせます。築30年が経ち、分譲時に一斉入居した世代はすべて70代。一斉入居組は特権意識を持ちつづけ、それぞれの家庭の事情と思惑、そして意固地になった意志の狭間で葛藤し、時間だけが消耗していく無力感がこれでもかと描かれます。
子育てに失敗した家庭が、残った子供になんとか資産を残してあげたいと建て替えを急ぎ、
子育てに成功した家庭は、自分の理想を貫くため建物の修繕を主張します。
最終的に、主導権を握った建替派。建て替え資金をためるため、修繕と管理コストを貯蓄することを決めて団地管理は更に荒れることになります。
ごたごたに巻き込まれたくないため、余裕がある世帯ほど無関心を決めて外に引っ越すため歯抜け状態に。家族の幸せのために買った夢のマイホームは負動産としてのしかかるのです。
- バブル期は新築より中古が4割高かった、それでも買うしかなかった
- 降格で年収が大幅に下がり、更に50代になると新たに住宅ローンを借り換えられないため当時の金利6.4%(!!)を払い続けるしかない
- 残債が残存価値に比べて多すぎて、銀行に一括返済できず売却できない
- 最寄り駅徒歩25分のバス便立地だと都心に通うのが大変で、ニュータウン駅そばのスーパーで働くのが最善手
- ニュータウンを出て戸建てを買って幸せそうと羨んでいたが、その相手の引越し先は狭小邸宅だった
- 高齢ニート息子は鳥の調教が唯一の趣味、ベランダで鳥を飼うもんだから同じ棟に住む人は糞害で洗濯物が干せず、汚れっぱなし。結果として個人のエゴが全体の価値を下げる
- 全体の価値を下げている張本人が自分と息子の脱出資金獲得のための建替推進役、でも物事は前に進まず建物管理をサボって荒れ放題
- 建て替えは便利駅近ならで行われるけど、バス便立地では建て替えは難しい、突破するため規制を解消しようにも、戸建て住まいの市議会議員は他人事
- まだ”東京都”で消耗してるの?川口駅なら東京駅まで京浜東北線でたった23分!東京のニュータウンにこだわる理由などない?
- マスコミが残り少ないライフを「お先真っ暗」と削りにきます。もうやめて!残りライフは・・・
- 助けてください!欧米出羽守老婆が日本の現状をディスるだけで他人事。解決策を全く言ってくれません。
などなど救われないエピソードの数々に感情移入をしてしまうと胃がキリキリしますが、不動産的視点で見ると勉強になることが多々。湾岸の行く末とは思いませんが、この問題に対処するための処方箋はいくつか書かれています。おすすめです。僕はkindleでさくっと読みました。
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弊は、下記被災地域の公助と比較して、不公平感を感じました。
公費投入の地域は国営放送で頻繁に放映され、公費投入外の地域の困りごとには関心を示さないのは、東アジア地域の特徴なのでしょうか?
困っている郊外バス便の集合住宅に公費でエレベータと空き部屋への家賃補助などして、被災地域の住民に移住の選択肢を準備しても良いような気がします。(新たに山林を切り崩すより、自然の復習を受け難いのでは?)
「陸前高田は2カ所で302ha 事業費は桁違いの1200億円」
“http://sumai.nikkei.co.jp/edit/rba/etc/detail/MMSUa8000017022014/”
「人口はわずか23,000人だ。多摩市の16%しかない」
“http://sumai.nikkei.co.jp/edit/rba/etc/detail/MMSUa8002026032013/”