内藤忍先生が推奨する都内ワンルーム投資を真剣に考えるエントリ、その3まで来ました。もし未読の方がいらっしゃれば

その1:内藤忍先生の語る中古区分ワンルームマンション投資の魅力とロジック
その2:内藤忍先生講師のセミナー報告と当日紹介された投資案件

をまずお読み下さい。

今回は、先生が推奨する購入法「信頼できる(ワンルーム)不動産販売会社から現地を見ずに買う」を少し掘り下げてみましょう。前回は絶句するほどの割高な物件を紹介されました。今回、たまたまこの会社が割高な物件を紹介してきただけでしょうか?他の物件や他社も同じなのでしょうか?

実は、いままで私宛に数多くのワンルーム投資の資金計画書が送られてきましたが、ほぼすべてが10万円の頭金・1000円前後の毎月マイナス、とテンプレートのような試算ばかりでした。つまり、先日のは例外ではなく、ワンルーム不動産販売会社から購入する物件は、フルローンで買うと基本的に赤字計算、ということです。

どう見ても割高な価格でなぜ売るのか

資金計算書に最初から赤字と書いている、苦戦必死の価格でなぜ売るのでしょうか?もう少しまともな値札を付けたほうが売れるのではないでしょうか、もしくは仕入れ値が極端に高いからでしょうか?
結論から言えば、「マイナスキャッシュフローの計算書を見せられても購入する人が一定数いるから」です。

マイナスキャッシュフロー物件の購入は、もはや投資ではなくただの浪費です。「月々のお家賃が支払いを肩代わりしてくれるのです」と説明を受けますが、月々の出血を耐えて耐えて・・・35年経ってようやく返済が終了してようやく黒字になる(ただし中古物件なので築10年を買ったら返済終了後は築45年のワンルーム)代物です。

35年間耐えなくても、不動産市況がとんでもなく好転して不動産価値が暴騰すればプラスで売り抜けることも可能です。いまは市況の山部分といわれています。山の上で下駄を履いた価格を出して購入した物件が、次の山で儲かるほど売ることができるか・・・、誰もわからないですが、相当分が悪いギャンブルでしょう。
2400万円の上記物件の適正価格を1850万円だとすると、残債が1850万円に達するのがちょうど10年後です。10年間価値が変わらないワンルームが世の中に存在するかは知りません。

それでも買う人がいるとすれば、減価償却費を経費で使って節税できるという言葉の甘い罠でしょう。給与所得と不動産所得を合算してマイナスになれば、所得税と住民税の割戻しを受けられます。減価償却はキャッシュアウトを伴わない費用なので、この部分だけは財布を傷めずに所得税を合法的に節税できます。

しかし、、、ですね。仮に年収700万円・2000万円の物件を購入したと、減価償却費は築年数にもよりますが、せいぜい年あたり建物取得額*2.5〜3.5%。2000万円のうち1500万円を建物取得価格として37.5〜52.5万円。所得税率20%+住民税10%と考えると、純粋な節税部分は年11.25〜15.75万円くらいでしょうか(付属設備についての償却を考えない場合)。その他、不動産所得で経費として計算できる管理費・修繕費・管理代行・ローンの利子分…など、これらはすべてキャッシュアウトを伴う費用なので”節税”とはいえません。そしてローン支払いの元金分は費用に含まれません。また物件を保有すると固定資産税などがかかってきますが、こちらについての説明はあまり強調もされません。

こう考えると、ワンルーム不動産販売会社は「減価償却費による節税気分を頭金10万円/諸費用70万円で販売している」と言っていいでしょう。そしてその殆どの場合が費用倒れになる可能性が高いのです。

ワンルーム不動産販売会社の値付けルール

判を押したような割高価格の決め方も、一定のルールがあることがわかります。資金計画を見ると周辺相場と比較した取引事例法ではなく、「ほぼフルローン状態で期間35年」「銀行から引っ張れた提携ローンの利率」「想定家賃」という変数から、キャッシュフローがギリギリマイナスになるよう逆算するのです。

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・築10年ワンルーム想定家賃7.5万円
・提携ローン利率1.75%
・管理費修繕費管理代行費1.2万円
という物件が仮にあったとします。
想定販売価格は資金計画を月額マイナス1000円と考え、毎月のローン支払い額は7.5-1.2+0.1=6.4万円。
6.4万円/月・35年1.75%から逆算したローン可能額2000万円+頭金相当10万円=2010万円が相対販売価格となります。

相対販売の不動産販売営業と違い、市場で売却する場合はそういった計算はもちろんしません。利回りと周辺取引事例で価格が決まります。想定家賃7.5万円の表面利回り6%で取引されるとなると

表面利回り6%の想定価格:(7.5*12)/6%=1500万円

となります。
もちろん仲介で売却ではなく、業者の買取だともっと悲惨な値段で買い叩かれます。

結局ワンルーム投資とは事業なのです

ということで、割高な物件を向こうの言うがままに買ったとしても全く勝機はなく、単なる浪費である。割高かどうかのジャッジは目の前の販売員がいうことをそのまま鵜呑みにせず、自分で検証することが重要ですねと、以上が私の結論です。

ワンルーム投資を事業として考えればよくわかります。

コンビニのフランチャイズ契約が、現代の奴隷契約だという理由と同じです。
ビジネスモデルやそこでのジャッジをすべて相手方に握られてしまうと、「経営」といいつつもまったく自由度も効かずコスト削減もできません。コンビニオーナーのコスト削減要素は「自分と家族がどれだけ店頭に出られるか」という一点に決まってしまうので、店に出ずっぱりとなり、悲惨な状態になるのです。

全く同じことが、ワンルーム不動産投資にも言えることです。
事業をすべて人任せにしてうまくいくとは思えません。「物件の選定」「借入先の開拓・選定」「管理会社の選定」すべて1パッケージでお任せするということは、利益の源泉部分をすべて相手方に取られてしまい、自分はコスト負担するばかり、となります。コスト削減要素もありません。

手放しノーチェックで投資に適した物件を紹介してくれる「信頼できる不動産販売会社」などこの世にありません。企業は利益を追求する集団であり、売れると思う価格のギリギリまで踏み込んできます。サラリーマンの与信と節税気分が彼らの利益の源泉です。私の結論は、内藤忍先生のそれとは反対です。

私の尊敬する個人投資家、「どエンド君」先生と初めてお会いした時のことを思い出します。平日の夕方に半ば無理やり押しかけてお会いしたのですが、去り際にこんなことを言われていました。
「今から不動産仲介の方の接待なんですよ」
「えっ、接待されるんですか」
「いやいや接待するんですよ。いい物件を紹介してもらうためにはちゃんと接待しないと」
ああ、そういう世界なんだな〜と思いました。クオカード配ってセミナー集客するのとは正反対の世界です。

オチがついてしまったので、ツッコミどころなどの所感・おまけ編はまた別エントリにします。

コメント & トラックバック

とても参考になりました。
月々のキャッシュフローが赤字の見積もりでも買う人がいるというのが私には信じられません。税制は長期的には社会の変化次第で変わり得るし(最近の相続税改正が好例ですね)、家賃は逓減すると想定して利益計画を計算するものだとばかり思っていました。ワンルームマンションを推奨する人たちは、フィービジネス中心の昔の証券マンのようなものですね。

やっぱり「どエンド君先生」のように現場現物のチェックをし、自分でキャッシュフローを計算し(出来)、シビアに算盤はじける人にしかこの手の投資はしちゃいけないということですね。
(そういえば、モモレジ先生も算盤はじきと相場観はかなりシビアですね)

結局、安く買えるならまだしも、ということですね。

のらえもんさんありがとうございます。勉強になりました。これと同時に土地活用のアパート経営についても書いてもらえたら嬉しいです。

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