質問箱に以下の依頼がきました。
中央区でこれまで行ってきた容積率緩和を原則行わないことになるようですが、これによって中央区のマンション市場にどのような変化が起こるのでしょうか?例えば日本橋の新築物件は今後あまり出てこなくなるか非常に高価になるため、買うなら今のうちに買っておいた方がいいのでしょうか?また中古になったときの価格は維持されやすくなるのでしょうか?どう予想されるかできればブログで取り上げていただきたいです。
えっと、まず僕は素人ですよ。できれば、他の人に聞いた方がいい質問かもしれませんね。
さて、前提知識として、東京都中央区は人口抑制を目的として、マンションを建てる際に認めてきた容積緩和(つまり同じ広さでより多くの戸数を建てられる)を廃止しますというニュースが少し前に出ていましたね。1997年の中央区人口は7万人まで落ち込んでいましたが、マンションがいっぱい建ったことにより、この20年で倍増し今は15万人になっています。これ以上増やしても公的インフラが追いつかないし、何より高齢者対策が増えるから、インバウンド政策対応のホテルの増加やオフィスビルの更新を加速させたほうが良いという判断でしょう。
人口増が続く中央区は、1993年から続けてきたマンションなどの住宅建設における容積率の緩和制度を、四半世紀ぶりに廃止する方針を固めた。採算性が下がり、新規のマンション建設などに影響を与える可能性がある。
(略)
中央区は銀座や日本橋など繁華街を多く抱え、90年代に人口流出が進んだ。定住人口を増やすため、一定の条件を満たせば最大で1・4倍まで容積率の緩和を認める政策を進めてきた。だが、近年はマンションの建設ラッシュなどを背景に人口の流入が続き、昨年1月には55年ぶりに15万人を突破。小学校や交通インフラの整備などが追いつかず、人口の流入抑制に転じることになった。
朝日新聞:東京)住宅の容積率緩和廃止へ 中央区、四半世紀ぶり 2018年3月6日03時00分
ちなみにこの容積緩和制度廃止は晴海地区は含まれていません。晴海地区は、オリンピック終了後の選手村入居もありまだまだ中央区自体の人口増加は避けられませんね。今回の決定で一番影響が大きいのは、ここ最近よく見た「日本橋◯◯町」の戸数が比較的小さい新築マンションの供給が今後途絶えそう、ということです。
マーキュリーさんのRealnet新築マンションサーチで、2012年以降販売された100戸以下のマンションを表示すると、近年凄まじい数の小規模マンションが中央区で分譲されたのがわかります。青いマンションは販売済み、黄色いマンションは販売中かこれから販売されるマンションです。
日本橋◯◯町とその周辺の2012年以降販売された新築マンション:
新川〜八丁堀〜築地〜入船〜湊〜明石町あたりの2012年以降販売された新築マンション:
日本橋◯◯町とその周辺あたりで今販売中ステータスのみを表示
現在、水天宮〜人形町周辺の新規供給物件消滅。浜町や馬喰横山駅周辺に固まっている(坪400以上…)。
今回の容積緩和廃止で、特に上記の小規模マンションの事業が難しくなります。マンション建てるなら500%、ホテル建てるなら700%という条件になると、入札で勝てなくなりますからね。
では、ご質問の:
1:買うなら今のうちに買っておいた方がいいのでしょうか?
こうしたマンションにいずれ新築で住みたいとお考えならこれから新規供給は途絶えそうですので、買った方が良いと考えます。
2:また中古になったときの価格は維持されやすくなるのでしょうか?
むずかしいのはこちらです。新規供給物件の広告費が、周辺中古の需要を喚起している要因は確実にあります。新規の流入が途絶えた街が住民にとって住みやすい街になっていくのか、かなり高くなってしまった今の水準の価格でも他の地区からこちらに住みたいと指名買いが起こっていくのか、よくわからないのです。私の予想は、他の地区と同様に築年数が経つにつれ、若干ではあるが緩やかに下がっていくのではないか。それでも郊外の人口減少社会にブチ当たるところよりは値下がり率はずっとマシではないだろうか、街はひとつの生き物だけど、中央区のこのエリアは、ホテルやビルの更新、コンバージョンがこれからどんどん進むだろうから。
そう考えます。
質問箱に質問した者です。
日本橋の某新築物件が当方の予算をだいぶオーバーしているのですが、新ルールによって中古相場が上がりそうなら無理をしてでも買おうかと迷っておりました。のらえもんさんの予想を拝見して将来の動きには不透明な部分が多く、資産価値についてあまり過大な期待はしない方がよいと感じましたので、購入を見送ることにしようと思います。
難しい質問に丁寧に答えて頂き有難うございました。
いつも楽しく拝見させていただいております。
新ルールについてですが、「総合設計」や「再開発事業」を使った開発の場合はルール変更の影響を受けないと思います。
小さい分譲マンションは「総合設計」が適用できず、地区計画の変更によって容積率緩和が受けられないケースが出てきます。そのため駆け込み建築ラッシュが多くみられたのかと。一方で、月島や晴海エリアのような「総合設計」や「再開発事業」を使ったタワーマンションの建築の際には影響はなく、従来通りのマンションが建てられるかと思います。
個人的には
総合設計を適用できるようなまとまった画地は稀少性がありますので、敷地規模の格差が大きくなる。タワーと小さいものの格差は大きくなる。そのように思っております。
乱文失礼しました。今後の行く末を見守っております。